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自己株式とは|意味・取得目的・株価への影響をわかりやすく解説


自己株式とは、発行した株式のうち、自社で保有している株式を指します。

市場で流通している自社の株式を、自社資金を使って買い戻す行為は自己株式取得(自社株買い)と呼ばれます。

本記事では、自己株式の意味や取得目的、株価への影響などをわかりやすく解説します。

※OANDA証券では株式取引をサービスとして提供していません。本記事は株式取引に関する一般的な知識を提供することを目的としています。

自己株式とは

まずは自己株式とは何かについて解説します。

  • ・自己株式の意味・特徴
  • ・自己株式と発行済株式数の関係

自己株式の意味・特徴

自己株式とは、株式会社が発行した株式のうち、自社で保有している株式を指します。

金庫株と呼ばれる場合もあります。

発行した株式を自社で取得する行為は、自己株式取得と呼ばれ、株主還元や株価対策の手段として活用されます。

自己株式取得には開示義務があり、公表された内容によっては、株価に大きな影響を与える可能性があります。

なお、自己株式には株主総会の議決権や配当金を受け取る権利はありません。

自己株式と発行済株式数の関係

自己株式取得が行われても発行済株式数は変わりませんが、流通株式数は減少します。

仮に、発行済株式総数が1000株の会社が100株の自己株式を取得した場合、市場で取引される株式数は900株に減少しますが、発行済株式総数は1000株のままということです。

自己株式の取得目的

企業が自己株式を取得する目的には、主に以下の3つがあります。

  • ・株主還元としての自己株式取得
  • ・株価対策としての自己株式取得
  • ・ストックオプションとしての自己株式取得

株主還元としての自己株式取得

自己株式取得は、株主還元の一策として位置付けられています。

企業が市場から株を買い集めると、需要の高まりによって株価が上昇しやすくなり、株主には資産価値の向上というメリットがあります。

また、自己株式取得によってEPS(1株あたり純利益)ROE(自己資本利益率)などの投資指標が変化することで、株価上昇につながる可能性もあります。

配当金のように株主に直接還元するわけではありませんが、株価上昇による資産価値の高まりによって間接的に還元する構図となります。

株価対策としての自己株式取得

株価が低迷している場合、対策として自己株式取得が行われる場合があります。

市場から企業が自己株式を購入すると、買い圧力が高まり、また投資指標が改善されることによってさらに投資家からの評価が高まる期待が持てます。

ただし、短期的な株価の上昇には効果がありますが、長期視点での株価維持にはつながりにくい場合も考えられます。

また、不景気時や、業績の悪化が続いているような場合は、効果が乏しい場合もあります。

ストックオプションとしての自己株式取得

自己株式はストックオプションに活用するために取得されることがあります。

ストックオプションとは、特定の株価で自社株を購入できる権利を付与する制度のことです。

従業員への還元や、人材確保の方法として利用されます。

ストックオプションに必要な株式の調達方法として、新株の発行や自己株式取得があります。

自己株式が株価に与える影響

企業が自己株式を取得することによって、株価が上昇する場合と下落する場合の2パターンが考えられます。

  • ・自己株式取得による株価上昇の主な要因
  • ・自己株式取得による株価下落の主な要因

自己株式取得による株価上昇の主な要因

自己株式取得により、需要が増えて株価が上がりやすくなる傾向があり、投資指標が変化することもプラス要因となります。

また、自己株式取得後に自己株式を消却して発行済株式数が減少すると、EPSが上昇し、株価上昇要因になる場合があります。

EPSが上昇すると、PER(株価収益率)が低下し、投資家から割安になっていると判断され買われやすくなります。

他方、自己株式取得によって自己資本が減少するため、ROEが相対的に上昇することも、株価上昇要因となります。

自己株式取得による株価下落の主な要因

自己株式取得は必ずしも株価を上昇させるわけではなく、下落させる場合もあります。

景気後退局面やコロナショックのような相場全体で株価が下落している場合は、売り圧力が非常に強いため、自己株式取得が発表されても需給改善効果が出ない可能性が高まります。

また、取得規模が小さい場合や、投資家の予想や期待を下回る場合も失望売りをまねき、株価が下落することがあります。

さらに、財務状況の悪化が嫌気される場合もあります。

自己株式取得による自己資本比率の低下を投資家がネガティブに捉え、将来の投資余力や財務健全性が懸念されて株価が下落するケースがあります。

自己株式に関する注意点

自己株式に関する注意点について解説していきます。

  • ・資金繰りへの影響
  • ・自己株式の処理方法に関する注意点
  • ・法規制・手続きコストに関する注意点

資金繰りへの影響

自己株式の取得数が多いほど、支払う金額も多くなります。

大規模な自己株式取得を行うと資金繰りが悪化し、事業の運転資金や投資資金の低下につながるデメリットがあります。

また、自己資金を使うことで自己資本比率が減少し、借入を利用する場合は将来的な返済義務が発生します。

そうすると財務の安定性が弱まることを投資家が嫌気し、株価が下落する可能性が出てきます。

自己株式の処理方法に関する注意点

取得した自己株式の取り扱いによっては、株価や企業の財務状況に大きな影響を与える可能性があります。

自己株式の処理方法には、主に以下の2つがあります。

処理方法 意味 影響
消却 自己株式を完全に廃棄する 市場に出回る発行済株式の総数が減少するため、株価の上昇が期待できる
処分 自己株式を売却・譲渡する 市場に出回る株数が増えるため、株価の下落につながる

消却とは、自己株式を法的に抹消する手続きのことです。

その株式は消滅し、発行済株式総数が減少するため、株価が上昇しやすくなります。

処分とは、株式を売ることや譲渡することを指します。

処分後は発行済株式総数は変わらないものの、市場に流通する株数は増えるため、株価下落要因となることがあります。

法規制・手続きコストに関する注意点

自己株式の取得、消却や処分には取締役会や株主総会の決議が必要です。

また、自己株式の取得は、配当可能利益(剰余金)など一定の資本余力を財源とする必要があります(会社法第461条)。

さらに、自己株式の取得や保有、消却は開示義務があり、有価証券報告書や決算短信への記載や、東京証券取引所が運営する適時開示情報閲覧サービス「TDnet」での適時開示が求められます。

自己株式を取得するための資金だけでなく、株主総会や取締役会の準備、開示手続きなど、大きな費用と手間が発生します。

自己株式に関するQ&A

自己株式について、よくある質問をまとめました。

  • ・自己株式はどこで確認できますか?
  • ・自己株式を取得すると株価は必ず上がりますか?
  • ・自己株式はいつ取得されることが多いですか?

自己株式はどこで確認できますか?

各企業の決算短信や有価証券報告書で確認可能です。

有価証券報告書は企業ホームページのIRページや金融庁が運営しているサービス「EDINET」でも閲覧できます。

また、東京証券取引所が運営している適時開示閲覧サービス「TDnet」や証券会社、株式情報サイトなどでも自己株式の取得状況などを確認可能です。

なお、自己株式の取得には開示義務が定められているため、原則として公表されます。

自己株式を取得すると株価は必ず上がりますか?

企業が自己株式を取得すると、市場に出回る株式が減るため、株価の上昇が期待できます。

ただし、必ず上昇するわけではありません。

自己株式取得が発表されても景気後退、取得規模が小さい、自己株式取得による財務悪化などによって株価が下落することもあります。

自己株式はいつ取得されることが多いですか?

決算発表のタイミング、株価が下落しているタイミング、中期経営計画を発表するタイミングで自己株式取得の発表が多い傾向があります。

【まとめ】自己株式とは|意味・取得目的・株価への影響をわかりやすく解説

自己株式とは、株式会社が発行した株式のうち、自社で保有している株式を指します。

発行した株式を自社で取得する行為は、自己株式取得と呼ばれます。

自己株式取得によって市場で流通する株数の減少や投資指標の改善などが起こり、株価の上昇につながる可能性があります。

ただし、必ず株価の上昇が起きるわけではありません。

景気後退期で株式市場全体が下落している局面、業績が年々悪化、自己株式取得による財務健全性への懸念などのマイナス要因がある場合は、株価が下落する可能性もあるので注意が必要です。

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