日本時間11月6日(金)22時30分に発表された2026年10月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+16.5万人と、市場予想(+6.5万人)を大きく上回りました。8月・9月分も合計8.4万人の上方修正となり、失業率は4.1%に低下、平均時給も前月比+0.4%と予想を上回りました。10月のFOMCでの据え置き後、初めての雇用統計は、雇用者数・改定・失業率・賃金のいずれも予想より強い内容です。一方で、発表後のドル円の上昇は一時的で、12月会合での利上げの織り込みも72.8%から76.8%への小幅な上昇にとどまりました。本記事では雇用統計の内訳をチャートで整理したうえで、今後のドル円(USD/JPY)とゴールド(XAU/USD)の見通しを解説します。
今回の雇用統計を3行でいうと
雇用者数は+16.5万人、予想を10万人上回る
8・9月分も合計8.4万人の上方修正で、3ヶ月平均は+13.7万人に
失業率は4.1%に低下、時給は前月比+0.4%
参加率が上がる中での低下。一方でU-6は7.9%に上昇
12月の利上げの織り込みは76.8%へ小幅に上昇
ドル円は158.58円まで上げた後、158.3円台へ押し戻された
結果ハイライト
主な項目の一覧
主な項目の結果は以下の通りです。予想の欄の札は、予想より高い結果を赤、低い結果を青で示しています。前回の欄は9月分の発表時の値です。
| 項目 | 今回 | 前回 | 予想 |
|---|---|---|---|
| 非農業部門 雇用者数 | +16.5万人 | +2.9万人 | +6.5万人 予想を上回る |
| うち民間 | +15.9万人 | +4.6万人 | ― |
| うち政府 | +0.6万人 | ▲1.7万人 | ― |
| 過去2ヶ月 分の改定 | +8.4万人 8・9月 | ▲6.0万人 7・8月 | ― |
| 失業率 | 4.1% 4.14% | 4.2% 4.18% | 4.2% 予想より低い |
| 労働参加率 | 61.9% | 61.8% | ― |
| U-6 (広い意味の失業率) | 7.9% | 7.6% | ― |
| 平均時給 前月比 | +0.4% +0.37% | +0.1% +0.13% | +0.3% 予想より高い |
| 平均時給 前年比 | +3.1% | +3.0% | +2.9% 予想より高い |
| 週平均 労働時間 | 34.4時間 | 34.4時間 | ― |
発表直後の市場の反応
発表直後のドル円(USD/JPY)1分足の値動き
ドル円は発表直前の158.32円近辺から、発表と同時に一時158.22円まで下げた後に切り返し、22時31分には158.58円まで上昇しました。発表直前からの上げ幅は約26銭です。ただ、その後は買いが続かず、22時34分には158.37円まで押し戻され、22時50分過ぎには158.3円台後半と、発表直前の水準に近いところで推移しています。
発表直後のゴールド(XAU/USD)1分足の値動き
ゴールドは発表直前の4,058ドル近辺から、発表直後の1分間で4,026ドルまで約32ドル下落しました。ただ、22時33分には4,050ドル台まで戻し、その後は4,045〜4,053ドルの範囲で推移しています。ドル円と同様に、初動の動きの多くを短時間で戻しました。
10月米雇用統計の結果の詳細
10月のNFPは前月比+16.5万人と、市場予想(+6.5万人)を大きく上回りました。あわせて8月分が+13.3万人から+18.6万人へ、9月分が+2.9万人から+6.0万人へ改定され、過去2ヶ月分の改定は合計8.4万人の上方修正です。前回9月分の発表では7・8月分が合計6.0万人下方修正されていましたが、今回は改定の向きが上方に変わりました。単月の振れをならした3ヶ月移動平均は+13.7万人と、前回時点の+5.1万人から大きく持ち直しています。BLSによると、10月の増加幅は過去12ヶ月の月平均(+4.8万人)を大きく上回りました。
雇用の内訳:民間部門が+15.9万人と大きく伸びる
内訳では民間部門が+15.9万人、政府部門が+0.6万人でした。政府部門のうち連邦政府は▲0.1万人です。前回9月分の発表時は民間+4.6万人・政府▲1.7万人で、今回は雇用者数の増加のほとんどを民間部門が占めています。民間部門の3ヶ月移動平均も+12.6万人と、9月時点(改定後+8.3万人)から伸びが高まりました。
業種別の増減の上位と下位は以下の通りです。
増えた業種
減った業種
業種別では、専門・ビジネスサービス、教育・医療、運輸・倉庫が増加した一方、娯楽・宿泊(外食含む)や卸売は減少しました。前回9月分の発表時に▲0.9万人だった専門・ビジネスサービスは+7.0万人と、今回の増加を最も押し上げました。BLSによると、専門・技術サービス(+3.3万人)や事務・支援サービス(+2.8万人)が伸び、人材派遣も+1.9万人と増えています。運輸・倉庫では宅配(+1.7万人)が伸び、製造業も+1.9万人と増加が続きました。医療に偏った増加ではなく、景気に敏感な業種にも増加が広がった点が今回の特徴です。BLSの雇用拡散指数(民間250業種のうち雇用が増えた業種の割合を示す指数、50が増減の境目)も57.6と、9月の54.2から上昇しました。
失業率と労働参加:参加率が上がる中で失業率は4.1%に低下
失業率(U-3)は4.1%(丸める前は4.14%)と前月(4.2%、丸める前4.18%)から低下しました。労働参加率は61.9%(前回61.8%)と上昇しており、職探しをやめる人が増えて失業率が下がったわけではありません。働く人や職を探す人が増える中での失業率の低下で、内容の良い低下といえます。一方、縁辺労働者やパートタイム就業者まで含めた広義の失業率(U-6)は7.9%(前回7.6%)に上昇しました。BLSによると、フルタイムで働きたいのにパートタイムで働いている人が33.9万人増えて480万人となっており、強い結果の中で弱さが見られた数少ない項目です。
用語メモ
労働参加率は、16歳以上の人口のうち、働いている人と職を探している人の割合です。職探しをやめる人が増えると下がり、失業率を見かけの上で押し下げることがあります。
U-6は、通常の失業率(U-3)に、職探しをあきらめた人や、フルタイムで働きたいのにパートタイムで働いている人などを加えた、広い意味の失業率です。
賃金:前月比+0.4%と予想を上回る
平均時給は前月比+0.4%(詳細値+0.37%)、前年比+3.1%でした。前年10月の伸び(前月比+0.41%)が大きかったため、前年比はベース効果で下がりやすく、前月比が+0.3%でも前年比は2.9%前後になる計算です。賃金の勢いは前月比で判断する必要があります。今回の前月比は+0.37%と予想(+0.3%)を上回り、前年比もベース効果があるなかで+3.1%と予想(+2.9%)を上回りました。前回9月分も+0.13%から+0.26%へ上方改定されており、9月時点で見えていた賃金の伸びの鈍化は、改定後の数字では目立たなくなっています。週平均労働時間は34.4時間と前月から横ばいでした。
用語メモ
ベース効果は、前年比が1年前の水準の影響を受けることです。1年前の同じ月に大きく伸びていると、今月の伸びが同じでも前年比は下がります。2025年10月の平均時給は前月比+0.41%と大きく伸びたため、今回の前年比は下がりやすくなっています。
全体として、今回の雇用統計は雇用者数・改定・失業率・賃金の4つの方向が「強い」でそろいました。前回9月分の発表で見えていた雇用の減速感は、改定と今回の数字で大きく和らいでいます。U-6の上昇は気がかりな点ですが、雇用の増加が業種に広がっている点とあわせて見ると、労働市場は底堅さを保っているといえます。
金融政策への影響:12月FOMCの利上げ観測
今回の結果を受けて、12月会合(12月8〜9日)までの0.25%の利上げの織り込みは、発表前の72.8%(22時10分時点)から76.8%(22時35分時点)へ上昇しました(※参照元:CME FedWatchツール)。10月のFOMCでは政策金利が3.75〜4.00%に据え置かれた一方、2人の委員が利上げを主張して反対し、ウォーシュFRB議長は12月の利上げを約束せず、今後得られる情報を見て判断する姿勢を示しています。今回の雇用統計は雇用の減速を示す内容ではなく、利上げを見込む向きがさらに増えました。もっとも、織り込みの上昇幅は4ポイントにとどまり、11月6日朝の68.4%から見ても大きな変化ではありません。12月会合の前には、11月10日に10月の米CPIの発表も控えています。
12月会合までの利上げの織り込み(CME FedWatch)
今後のドル円(USD/JPY)の見通し
雇用統計の発表直後、ドル円は158.32円近辺から一時158.58円まで上昇しました。その後は158.3円台に押し戻され、強い結果を受けた上昇は長続きしていません。この日のドル円は、朝の157.6円台から発表前にかけて158.3円台まで戻していました。1時間足では、ボリンジャーバンドの中心線(157.94円)を上回り、+2σ(158.47円)に近い位置で推移しています。表示期間の高値は11月4日の158.77円、安値は157.09円です。
発表後(11月6日22時45分時点)のオーダーブックでは、オープンオーダー(未約定注文)は買いが59.77%、売りが40.23%です。現在値(158.43円)より上では、159.00円と160.00円、158.75円に売り指値が厚く、159.10〜159.20円には買いの逆指値(ストップ)が集まっています。下では156.00円と157.20〜157.25円に買い指値が、156.90〜156.95円に売りの逆指値が多く置かれています。
オープンポジションはロング47.8%、ショート52.2%と、ややショートが多い状態です。現在値より上で買った含み損のロングが27.23%、現在値より下で売った含み損のショートが32.39%あり、ショートの含み損のほうがやや多くなっています。
直近1週間(10月30日22時〜11月6日22時)の通貨強弱チャートを見ると、最も強いのはスイスフラン、最も弱いのは豪ドルで、米ドルは4位、円は5位です。米ドルと円の強さの差は、米中間選挙の開票が進んだ11月4日に最も広がり、その後は縮んでいます。ドル円が11月4日の158.76円から下げた動きと重なります。
日足では、21日移動平均線(157.96円)と75日移動平均線(158.00円)を上回る一方、200日移動平均線(158.63円)の手前で推移しています。RSI(14)は54台と、買われ過ぎ・売られ過ぎのどちらでもない水準です。以上を踏まえると、上値は発表後の高値158.58円と200日移動平均線の158.6円台、売り指値の厚い158.75〜159.00円が意識されやすい水準です。159.20円付近の買いの逆指値を上抜けると、上昇に勢いがつく可能性があります。下値は21日・75日移動平均線と1時間足の中心線が重なる157.9〜158.0円台、買い指値の厚い157.25円が目安で、156.90円付近の売りの逆指値を下抜けると下げが加速する可能性があります。来週は11月10日に10月の米CPIの発表を控えています。
今後のゴールド(XAU/USD)の見通し
発表後のゴールドは、4,058ドル近辺から一時4,026ドルまで下落し、22時52分時点では4,050ドル台で推移しています。利息を生まないゴールドは、利上げ観測が強まる局面で売られやすい資産ですが、今回は下落の多くを短時間で戻しました。1時間足では、ボリンジャーバンドの中心線(4,072ドル)を下回り、−2σ(4,028ドル)に近い位置で推移しています。発表後の安値4,026ドルは、ちょうど−2σ付近です。
日足では、21日移動平均線(4,072ドル)をわずかに下回り、75日移動平均線(4,245ドル)と200日移動平均線(4,461ドル)を大きく下回っています。RSI(14)は47台です。上値は21日移動平均線と1時間足の中心線が重なる4,070ドル台、その上は1時間足の+2σの4,116ドルと直近の高値4,146ドルが、下値は発表後の安値4,026ドル、その下は直近の安値3,870ドルが目安として意識されやすい水準です。
12月FOMCまでの主な予定
12月のFOMCまでに発表される主な指標は以下の通りです。
11月13日(金)22:30
10月の米生産者物価指数(PPI)
前回9月は総合+6.3%・コア+5.0%(前年比)。企業の仕入れ価格の上昇が消費者物価に波及するか
12月4日(金)22:30
11月の米雇用統計
12月FOMC前の最後の雇用統計
12月10日(木)4:00
FOMCの結果発表(12月8〜9日会合)
経済見通しとドット・チャートも公表
まとめ
- ✓10月米雇用統計はNFP+16.5万人と予想(+6.5万人)を大きく上回る。過去2ヶ月分は合計8.4万人の上方修正
- ✓失業率は4.1%に低下、労働参加率は61.9%に上昇。U-6は7.9%に上昇
- ✓平均時給は前月比+0.4%・前年比+3.1%と、いずれも予想を上回る
- ✓12月会合までの利上げの織り込みは72.8%(発表前)→76.8%へ上昇
- ✓ドル円は一時158.58円まで上昇後、158.3円台へ押し戻し。上値は158.6〜159.0円、下値は157.9〜158.0円が目安。ゴールドは一時4,026ドルまで下げた後、4,050ドル台に戻す
▶ 発表前の注目点・市場予想の解説はこちら:米雇用統計(2026年10月)予想と注目点
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OANDA Lab編集部
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