逆イールドとは|意味・チャートの表示方法を解説
各国の経済状況を分析する際には、債券の利回り(イールド)が注目されます。
通常、順イールド(短期金利が、長期金利よりも低い)の状態ですが、逆イールド(短期金利が、長期金利よりも高い)になる場合もあります。
本記事では、逆イールドが経済へ及ぼす影響や、チャートで確認する方法、過去の事例などについて解説します。
逆イールドとは
逆イールドとは、利回り(イールド)が逆転する現象のことです。
「短期債券の利回り(短期金利)が、長期債券の利回り(長期金利)よりも高い状態」を意味します。
一般的に、2年物国債利回りと、10年物国債利回りが比較されます。
通常、短期金利は長期金利よりも低いため、逆イールドは「通常とは異なる状態」です。
景気後退(リセッション)の予兆とされています。
順イールド
順イールドとは「短期金利が、長期金利よりも低い状態」です。
本来の金利は、順イールドになるのが正しい状態であるため「順」という文字が付きます。
基本的に債券は、償還(満期)までの期間が長ければ長いほど、回収のリスク、コストが生じることから、利回りは高くなります。
そのため、「長期金利>短期金利」となるのが本来の状態です。
しかし、「短期金利が大幅に上昇」または「長期金利が大幅に低下」すると、「短期金利>長期金利」という状態になります。
この状態を逆イールド(長短金利の逆転現象)と呼びます。
イールドカーブとは
イールドカーブとは、債券の償還までの期間と、利回りの関係を示した曲線グラフのことです。
日本語で「利回り曲線」とも呼ばれます。
下図のように、横軸に償還期間、縦軸に利回りをとります。
この曲線は、利回りの変化に応じて、傾きを変えます。
傾きが急になることをスティープ化(スティープニング)、フラットになることをフラット化(フラットニング)といいます。
スティープ化とフラット化は、下図の通り、順イールドにも逆イールドにも起こります。
米国債利回りをチャートで確認する方法
TradingViewで、米国債利回りを表示する方法を解説します。シンボル検索で「US10Y」と入力すると米国債10年物利回り、「US02Y」と入力すると米国債2年物利回りを表示することができます。
また、チャートの比較(追加)機能を使用すると、2つの利回りを簡単に比較したり、米ドル/円のチャートと併せて分析を行うことができます。
長短債券利回りと、為替相場をチェックすることで、市場の変化を素早く察知することができます。
- TradingViewのチャートを使った米国債10年物利回りと米国債2年物利回り、米ドル/円の比較チャート例
(2021年9月〜2024年3月)
出典:米国10年債利回り、米国2年債利回りとドル円の比較(Trading View)
米国債における逆イールドの事例
ここでは、米国債で発生した逆イールドの代表的な事例として、以下の2つの期間を解説します。
※いずれも「2年物利回り」と「10年物利回り」で比較
- ・1978年8月~1980年5月
- ・2022年7月~
1978年8月~1980年5月
1978年8月〜1980年5月までの1年9か月にわたり継続した逆イールドは、米国史上最長(※2024年3月18日時点)のものです。
この期間中、ダウ工業平均指数は17か月で約8.4%下落しました。
一方、S&P500指数は18か月間で約16%上昇しました。
一般的に、逆イールドは「景気後退のサイン」とされますが、経済の全ての部分で景気後退が起こるとは限らないことがわかります。
2022年7月~
2022年7月から始まった逆イールドは、2024年3月18日時点でまだ継続しています。
チャートを振り返ると、この逆イールドが本格化する前に、短い逆イールドが2回発生していることがわかります。
出典:TradingView
上グラフは2年物利回りと10年物利回りの差を、ラインチャートで表したものです。
この差がマイナスになっている箇所(線が赤色)が、逆イールドになっていることを意味します。
最初に赤くなった①は「2022年3月29日」で、この時は4日程度ですぐに解消しています。
(グラフ上では「2022年4月1日〜4月5日」までが逆イールド)
その後、②の「2022年6月14日」前後に、再び逆イールドが発生しています。
(この逆イールドは、グラフ上では12時間程度で解消)
そして、③の「2022年7月6日」前後から、本格的な逆イールドが始まり、以下のグラフの通り2024年3月18日時点でも継続しています。
出典:TradingView
徐々に順イールドに回帰しつつあるものの、2022年7月から2024年3月まで、1年8か月にわたり逆イールドが継続している状態です。
前述した歴代最長の逆イールドは「1年9か月」ですが、今回の逆イールドはこの記録を更新する可能性が高くなっています。
逆イールドに関するQ&A
ここでは、逆イールドに関してよく見られる疑問点について回答します。
- ・逆イールドはなぜ起きてしまうのですか?
- ・逆イールドはなぜ景気後退(リセッション)のサインと見られることが多いのですか?
逆イールドはなぜ起きてしまうのですか?
逆イールドが起こる背景にはさまざまな要因がありますが、中央銀行による金融引き締め(利上げ)が影響する場合があります。
金融引き締めでは、一般的に1年から数年程度、政策金利の引き上げが継続します。
そのことを織り込んだ債券市場では、短期金利が上昇しやすくなります。
その一方、利上げの影響により将来の景気が減速すると予想され、その際には利下げに転じると連想されます。
そのため、長期金利が上がりにくくなります。
これらによって、長短金利の逆転現象が起きやすくなります。
逆イールドはなぜ景気後退(リセッション)のサインと見られることが多いのですか?
逆イールドは、市場参加者が将来の景気悪化を予想することで生じます。
そして米国では、逆イールド状態が続くと景気後退に陥りやすいという経験則があるため、景気後退の予兆としてとらえられます。
とはいえ、景気の変動にはさまざまな要因が複雑に絡み合っており、その時々によって理由は異なります。
あくまでも経験則として実績があるに過ぎず、必ずしも景気後退が起こるわけではありません。
【まとめ】逆イールドとは|意味・チャートの表示方法を解説
逆イールドとは、債券の償還までの期間と利回りの関係を示した曲線グラフ「イールドカーブ」において、短期金利が長期金利を上回る「長短金利の逆転現象」のことです。
通常であれば、短期金利が長期金利よりも低い順イールドの状態になりますが、中央銀行による金融引き締めなどさまざまな要因によって、逆イールドに転じる場合があります。
一般的に、逆イールドは景気後退(リセッション)のサインとされます。とはいえ、必ずしも景気の後退をもたらすとは限りません。
これだけで景気予測や投資判断をするのではなく、あらゆる観点から相場や経済を見通すことが重要です。
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。