10月30日の日銀金融政策決定会合で、日銀は政策金利を1.25%に据え置くことを決めました。票は賛成8・反対1で、高田委員が1.5%への利上げを提案しました。保有するETFの売却ペースは年間8,600億円程度(簿価ベース)へ引き上げています。同時に公表した展望レポートでは、コアCPI(生鮮食品を除く)の見通しを2027年度+2.6%と7月時点の+2.4%から引き上げ、基調的な物価上昇率は「2%の『物価安定の目標』と概ね整合的な水準となっている」と、目標に達したとの判断を示しています。本記事では、声明と展望レポートの要点、発表直後の値動きを整理したうえで、今後のドル円(USD/JPY)と日経225(JP225)の見通しを解説します。15時30分からの植田総裁の会見の要点は、会見終了後に追記します。
結果ハイライト
発表直後の市場の反応
- ドル円(USD/JPY):発表前157.51円近辺 → 公表直後に157.62円まで上げた後、157.35円近辺へ下落(円買い)。12時14分には157.11円まで下げました(発表15分後:157.23円近辺)
- 日経225(JP225):発表前62,950円近辺 → 公表直後に62,690円近辺へ下落(発表15分後:62,780円近辺)
発表直後のドル円(USD/JPY)1分足の値動き
発表直後の日経225(JP225)1分足の値動き
据え置きは事前に大半が見込んでいたため、相場は決定の中身に反応したとみられます。ドル円は、高田委員が1.5%への利上げを提案したことや、基調的な物価上昇率が目標に達したとの判断が示されたことで、追加利上げへの意識が強まり、円買いが優勢になりました。日経225は、ETFの売却ペースの引き上げによる株式需給の悪化が意識され、下落しています。
10月日銀会合の結果の詳細
政策金利:1.25%で据え置き、利上げを続ける方針は維持
日銀は2026年に入り、6月に1.00%、9月に1.25%と3ヶ月の間隔で利上げを進めてきましたが、今回は9月の利上げから約6週間で、政策金利を据え置きました。今回の声明は、金融市場調節方針と票の内訳を示す短い形式で、据え置きの理由は記されていません。一方、展望レポートの基本的見解では、今後の運営方針として「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」との表現を維持しています。
ETFの売却ペース:年間8,600億円程度へ引き上げ
今回の会合では、保有するETF(上場投資信託)の売却ペースの見直しも全員一致で決めました。日銀は2025年9月の会合で年間3,300億円程度(簿価ベース)の売却を決め、2026年1月から売却を進めてきました。声明では、市場に大きな影響を与えることなく売却が進んでいることと、株式市場全体の売買代金が拡大していることを理由に、売買代金に占める売却の割合を0.05%程度から0.1%程度へ高め、年間の売却ペースを8,600億円程度(簿価ベース)とするとしています。時価に換算すると年間2兆4,600億円程度で、2027年1月から実施します。J-REITの売却ペースは、年間50億円程度のままです。
展望レポート:2027年度の物価見通しを引き上げ、基調物価は「2%と概ね整合的」に
今回の展望レポートの政策委員見通し(中央値)は以下の通りです。
※ 表は横にスクロールできます →
| 年度 | 実質GDP | コアCPI(除く生鮮食品) | コアコアCPI(除く生鮮食品・エネルギー) |
|---|---|---|---|
| 2026年度 | +0.7%(7月 +0.6%) | +2.5%(7月 +2.5%) | +2.4%(7月 +2.5%) |
| 2027年度 | +0.7%(7月 +0.8%) | +2.6%(7月 +2.4%) | +2.7%(7月 +2.6%) |
| 2028年度 | +0.8%(7月 +0.8%) | +2.0%(7月 +2.0%) | +2.3%(7月 +2.2%) |
※政策委員見通しの中央値(対前年度比)。括弧内は7月時点。出所:日本銀行「経済・物価情勢の展望(2026年10月)」
コアCPIの見通しは、2027年度が+2.6%と7月の+2.4%から引き上げられ、2026年度(+2.5%)と2028年度(+2.0%)は据え置かれました。展望レポートは、夏場以降の原油価格上昇の影響などから2027年度が上振れたと説明しています。原油価格(ドバイ原油)の前提は、7月の1バレル80ドル程度から、今回は105ドル程度を出発点に見通し期間の終盤にかけて70ドル程度まで下がる想定に変わりました。エネルギーを除いたコアコアCPIは、2026年度が+2.4%と0.1ポイント下がった一方、2027年度は+2.7%、2028年度は+2.3%と、それぞれ0.1ポイント上がっています。実質GDPの見通しは「概ね不変」とされました。
なお、今回の見通しには、国会で審議中の飲食料品の消費税率の臨時的な引き下げは織り込まれていません。日銀は、税制改正大綱どおりに実施された場合、2027年度のコアCPIを1.3ポイント程度、コアコアCPIを1.4ポイント程度押し下げるとの機械的な試算を示しています。
最も大きな変化は、基調的な物価上昇率の判断です。7月は「2026年度後半から2027年度にかけて」物価安定の目標と概ね整合的な水準になるとの見通しでしたが、今回は「2%の『物価安定の目標』と概ね整合的な水準となっており、先行きも同程度で推移する」と、すでに目標に達したとの判断に進めました。そのうえで、今後は「2%程度の水準での定着度合いを確認していくことが重要」としています。コアCPIは「2%をはっきりと上回る水準まで伸び率を高めていく」との表現を維持し、物価の見通しのリスクは引き続き「上振れリスクの方が大きい」と評価しました。基調的な物価上昇率が2%を超えて上振れていくリスクについても、「十分に留意する必要がある」としています。
声明文の変更点と票の割れ
今回の声明は、7月と同じ短い形式の「当面の金融政策運営について」です。7月の声明と比べると、金融市場調節方針(1.25%程度)に加えて、ETFの売却ペースの見直しが2つ目の項目として加わりました。今後の運営方針「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」は、展望レポートの基本的見解の中で維持されています。
票は賛成8・反対1でした。反対したのは高田委員で、「基調物価が『物価安定の目標』に達した中、機動的な対応が可能となる中立金利に近づけるペースを速める新たな局面に入った」として、政策金利を1.5%程度とする議案を提出し、反対多数で否決されました。高田委員は7月の会合でも利上げを提案しており、9月の利上げには賛成していました。9月に利上げに反対した浅田委員と佐藤委員は、今回の据え置きには賛成しています。
声明文(「当面の金融政策運営について」)の全文
今回の声明の全文は以下の通りです。太字は、同じ短い形式の7月31日の声明からの主な変更箇所です。
1.金融市場調節方針(賛成8反対1)(注)
日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、1.25%程度で推移するよう促す。
2.ETFの売却ペースの見直し(全員一致)
日本銀行は、2025年9月の政策委員会・金融政策決定会合において、保有するETFの売却について、同年7月まで行っていた「金融機関から買入れた株式」の売却を円滑に進めてきた経験を踏まえて、当分の間、当該売却と同程度の規模(当時の市場全体の売買代金に占める売却割合は0.05%程度)で行うこととし、年間の売却ペースを3,300億円程度(簿価ベース)とすることを決定した。
本年1月より、ETFの売却を開始し、市場に大きな影響を与えることなく円滑に進めている。また、株式市場においては市場全体の売買代金も拡大している。こうしたことを踏まえ、本日の金融政策決定会合において、ETFの売却について、市場全体の売買代金に占める売却割合が0.1%程度となる規模で行うこととし、年間の売却ペースを8,600億円程度(簿価ベース)とすることを決定した。
以上
(注釈)本年1月から9月までの東証プライム市場全体の売買代金および同期間に日本銀行が売却したETFの時価簿価比率を用いて計算。同比率を用いて時価に換算すると年間2兆4,600億円程度となる。2027年1月から実施。市場等の状況に応じ、年間の売却ペースの範囲内で、売却額の一時的な調整、停止を行うことができる(従来どおり)。J-REITの売却ペースは、引き続き、年間50億円程度(簿価ベース)とする。
(注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、田村委員、小枝委員、増委員、浅田委員、佐藤委員。反対:高田委員。高田委員は、基調物価が「物価安定の目標」に達した中、機動的な対応が可能となる中立金利に近づけるペースを速める新たな局面に入ったとして、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.5%程度で推移するよう促すとする議案を提出し、反対多数で否決された。
金融政策への影響:基調物価の判断が前進、焦点は12月会合へ
今回の会合の直前には、日米で材料が続きました。29日未明のFOMCは政策金利を3.75~4.00%に据え置き、2人の委員が利上げを主張して反対しました。29日夜の米7-9月期GDP速報値は前期比年率+3.4%と市場予想(+3.2%)を上回り、9月のコアPCEデフレーターは前年比+3.1%と予想通りでした。今朝の東京都区部CPIは、コアが前年比+2.6%と予想と一致しています。
こうしたなかで開かれた今回の会合では、政策金利は据え置かれたものの、基調的な物価上昇率が目標に達したとの判断が示され、高田委員が利上げを提案し、利上げを続ける方針も維持されました。12月会合での利上げを見込む向きにとっては、その見方を支える内容とみられます。会合前の12月の利上げの織り込みは7割台半ば(10月29日夕方時点、OIS)でした。米国でも12月の利上げ観測が8割台(FedWatch)と高く、日米ともに利上げ観測が残っています。12月の判断について植田総裁が会見でどう語るかが、次の焦点になります。
今後のドル円(USD/JPY)・日経225(JP225)の見通し
公表後の12時15分時点のOANDAのオーダーブックを見ると、オープンオーダー(未約定注文)は買いが59.3%、売りが40.7%です。現在値の上では158.35円や158.50円に売り指値が厚く、下では157.00円と156.00円に買い指値がまとまっています。157.00円近辺には売り逆指値(売りストップ)もあり、下抜けると売りが加速する可能性があります。オープンポジションはロング49.4%、ショート50.6%と拮抗していますが、現在値より上に含み損のロングが37.2%と多く、戻る場面では157.70〜157.95円近辺で売りが出やすいとみられます。
15時30分からの植田総裁の会見の要点と、会見後の値動きを踏まえた今後の見通しは、会見終了後に本記事を更新してお伝えします。
まとめ
- ✓10月日銀会合は政策金利を1.25%で据え置き。票は賛成8・反対1(高田委員が1.5%への利上げを提案)。ETFの売却ペースは年間8,600億円程度(簿価ベース、2027年1月から)へ引き上げ
- ✓展望レポートはコアCPIの見通しを2026年度+2.5%、2027年度+2.6%、2028年度+2.0%に(7月は+2.5%、+2.4%、+2.0%)。基調的な物価上昇率は「2%と概ね整合的な水準となっている」と、目標に達したとの判断に前進
- ✓15時30分からの植田総裁の会見の要点と今後の見通しは、会見終了後に追記します
▶ 会合前の注目点・シナリオの解説はこちら:日銀会合(2026年10月)予想と注目点
▶ 前日のFOMCの結果はこちら:10月FOMCの結果とドル円・金の見通し
▶ 前夜の米GDP速報値の結果はこちら:米GDP速報値(7-9月期)の結果とドル円・ゴールドの見通し
▶ 今朝の東京都区部CPI・失業率の結果はこちら:10月東京都区部CPI・失業率の結果
Published by
OANDA Lab編集部
OANDA証券株式会社が運営する「OANDAラボ」は、FX/CFDを統計学的側面で科学するメディアです。外国為替(FX)や世界の株価指数、金や原油などの商品市場に関するマーケット情報やデータ、ニュースを提供しています。
会社名:OANDA証券株式会社
所在地:東京都千代田区平河町1-3-13 CIRCLES平河町 10階
加入協会:一般社団法人金融先物取引業協会 / 日本証券業協会 / 日本商品先物取引業協会
登録番号:第一種 金融商品取引業 関東財務局長 (金商) 第2137号
問い合わせ先:お問い合わせフォームから
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
