貴金属の基礎

プラチナの需要と供給|ゴールドと比較しながら解説

まずプラチナの需給をみてみましょう。プラチナの需給はゴールドのそれと比べると非常に特徴的です。供給も需要も全くゴールドとは違います。その比較から考えるのがPGMの特性を考える上でもっともわかりやすい方法だと思いますので、ところどころでゴールドと比較をしながら解説したいと思います。

参考記事:PGM(白金族)とは?プラチナ・パラジウムの歴史や特徴とその用途

(プラチナ需給表)

プラチナ需給表

この表はMetals Focus社の最新の統計である「PGM Focus 2022」からの最新の数字をトロイオンスから我々日本人にわかりやすいトンに直したものです。


プラチナの供給



a.鉱山生産


プラチナの鉱山生産は確定している2021年は195.86トンです。ゴールドの2021年の年間鉱山生産量は、3693トンであり、約19分の1に過ぎません。生産量で測る希少性は圧倒的にプラチナの方がゴールドよりも高いのです。おそらく一般日本人のイメージではプラチナの方がゴールドよりも高価であるというのが一般的でしょう。

クレジットカードもいまだにプラチナカードの方がゴールドカードよりもステイタスが高いというのが現状です。しかし実情は2015年にその価格は逆転、現在ではゴールドの方がプラチナよりも1.8倍高い状況です。価格は決してその希少性だけによっているのではないのです。

(円建てプラチナとゴールド過去20年の動き)

円建てプラチナとゴールド過去20年の動き

(プラチナの鉱山生産2020年)

トン 割合
南アフリカ 132.4 72.5%
ロシア 19 10.4%
ジンバブエ 14.5 7.9%
カナダ 6.6 3.6%
米国 3.7 2.0%
その他 6.4 3.5%
鉱山生産合計 182.6

プラチナの鉱山生産の7割以上が南アフリカです。貴金属の中でももっともその存在が偏在しているのがプラチナです。ゴールドは世界中ほぼどこでも生産されています。

昔戦国時代から江戸時代にかけては日本も世界で有数といっていい生産量がありました。佐渡金山や土肥金山は有名です。現在ではほぼ掘りつくしてしまいましたが、日本で唯一残っている金山は鹿児島県の菱刈金山だけです。

1960-70年代はゴールドでも南アが年間1000トン以上掘っている年もあり、南アは圧倒的なシェアを持っていましたが、現在では100トン台と南アの生産量は激減し、圧倒的な産金国はありません。

しかしプラチナは全く違います。昔から、現在もそして将来も南アが圧倒的なシェアを誇る状態は変わらないでしょう。その理由は、プラチナが存在する鉱脈は圧倒的にジンバブエも含めたこの地域に偏在しているからです。ほかの場所ではいくら努力しても掘ることはできません。存在しないのですから。

プラチナは南ア、ジンバブエ、ロシアそして北米にしか存在しません。この偏在の理由は、プラチナをはじめとするPGMが隕石由来であるという説が有力です。PGMを含んだ巨大隕石が南ア、ロシアそして北米に落ちたのです。

ゴールドは多くの国で生産されるため、南アで何か起きてもほとんど反応しませんが、プラチナはやはりジンバブエと一緒にその生産シェアの8割を占める南アで、生産にかかわるような事件、電力問題や、労働争議などが起これば大きく反応します。安定した供給体制を誇るゴールドに対してプラチナの供給は南ア一国に頼る分、非常に不安定となる可能性があると言えます。


b.スクラップからの二次供給


鉱山生産は132トンでしたが、自動車触媒から回収が44トン、電子材が2トン、宝飾品が13トンあります。スクラップの回収はその時のプラチナ価格が高ければ増え、安ければ減ります。

もっとも大きい自動車触媒は、自動車の寿命が約15年とされているので、15年前の生産台数がその最大の数字となると考えれば予想がしやすいものです。過去からの数字をみる限り、スクラップからの供給はここ数年はだいたい60トン前後と鉱山からの供給の3分の1くらいのレベルです。


本記事の監修者・Bruce Ikemizu / 池水雄一


1986年上智大学外国語学部英語学科卒業後、住友商事株式会社。1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産株式会社で貴金属チームを率いる。2006年スタンダードバンクに移籍、2009年同東京支店支店長就任。2019年9月日本貴金属マーケット協会代表理事。

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