米国雇用統計は市場の期待には届かず・・・。今週は米国消費者物価指数、ECB理事会に注目 OANDAラボ-マーケット最新情報(2021年6月7日)
米国雇用統計は市場の期待に届かず
先週は米国の経済指標に揺さぶられる週となりました。消費者物価指数に続き、前週発表されたPCEデフレータが市場予想を上回る結果となったことに加え、今週発表されたISM景況指数も市場予想を上回る好結果となり、米国の金融緩和縮小が意識される中、木曜日に発表されたADP雇用統計が市場予想を大幅に上回る好結果となったことを受けて、翌日の雇用統計への期待感により、米ドルが底堅い推移となりました。
しかし、金曜日に発表された政府発表の雇用統計は、失業率が市場予想以上に低下したものの、労働参加率も低下となったほか、非農業部門雇用者数が市場予想を少し下回り、前日のADP雇用統計で膨らんだ期待感は失望に変わり、発表後は米ドルが大きく売られる展開となりました。
冷静にデータを見ると、前月よりも改善している項目が多く、米国経済の回復基調を確認でき、悲観するような内容でもないため、今週もドル売りが続くかに注目したいところです。
米国債利回りは、ジリジリと上昇するが続いたものの、週末の雇用統計の結果を受けて下落に転じたほか、株式市場は米国のテーパリングへの警戒感により、高値圏で伸び悩む動きが続いた後、雇用時計の結果を受けて、警戒感が和らいだこともあり、上昇に転じています。
【ドルインデックス、S&P500、米国10年債利回りの動き】
参考データ
【米国の失業率の推移】
【米国の非農業部門雇用者数変化の推移】
【米国の労働参加率の推移】
【米国の平均時給変化率の推移】
【米国のISM景況指数の推移】
【残存期限別の米国債利回りの推移】
出所:U.S. DEPARTMENT OF THE TREASURY
【3Dグラフで見た米国債イールドカーブの推移】
出所:U.S. DEPARTMENT OF THE TREASURY
米国消費者物価異数、ECB理事会に注目
今週は米国で消費者物価指数の発表が予定されています。前月の強い結果(全体:前年比+4.2%、コア:前年比+3.0%)に続き、今月も高い数値が続くかに注目が集まります。FRBは「一時的な」上昇との見方が中心のようですが、強い結果が続くと市場では金融緩和の縮小(テーパリング)開始が意識され、米ドルの下支え材料、株式市場の上値圧迫材料となる可能性に注意が必要となりそうです。
【米国の消費者物価指数(前年比)の推移】
【米国のPCEデフレータの推移】
欧州ではECB理事会が予定されています。ECB関係者から緩和縮小に関して消極的なコメントが多いこと考えると、今回の会合における金融政策の変更の可能性は低いと考えられますが、総裁の会見やECBスタッフによる経済予測の内容によってはユーロを中心に神経質な動きとなる可能性も考えられそうです。
ユーロ圏の経済見通し、金利、物価、ユーロの価格水準に関する評価などに注目したいです。
前回のECBスタッフによるマクロ経済予測(英語)はこちらで確認できます。
【ユーロ圏の政策金利の推移】
【ECBのバランスシートの推移】
【ユーロ圏の消費者物価指数の推移】
【ユーロ圏主要国の推移】
主要通貨の強弱
先週のFX市場は米ドル高が進んだものの、週末に発表された雇用統計の結果を受けて逆に米ドル売りが強まる展開となりました。このほか、ECB関係者の緩和縮小に消極的なコメントがユーロの上値圧迫材料となったほか、英国でロックダウン解除延長の可能性が出てきたことがポンドの上値圧迫材料となりました。
これに対し、米国雇用統計後に買いが強まった豪ドル、円が主要通貨の中では相対的に強い通貨となりました。
【先週の主要8通貨の通貨別の騰落率】
直近30日間の主要通貨の通貨の強弱チャートを見ると、引き続きポンドが強いのに対し、円、豪ドル、NZドルが弱い推移となっていますが、週末には少し収縮するような動きとなりました。
【直近30日間の主要8通貨の通貨の強弱チャート】
直近30日間の株価指数の変化率
米国市場
先週の米国株式市場はADP雇用統計の結果を受けて下押す動きとなったものの、政府発表の雇用統計の結果を受けて反発する動きとなりました。
欧州市場
欧州の株価指数は概ね底堅い推移となりましたが、ロックダウン解除延期の可能性が出てきた英国の株価指数が少し上値の重い動きとなりました。
アジア・オセアニア市場
先週のアジア・オセアニアの株価指数は概ね底堅い推移となりましたが、高値圏での推移が続いていた中国や香港の株価指数は少し上値の重い動きとなりました。
主要銘柄の相関性分析
前週はバラバラな動きとなったドルストレートの通貨ペアですが、今週は米国の経済指標により、米ドル中心で動くことが多かったこともあり、南アフリカランド以外は対米ドルで比較的相関性の高い動きとなりました。
【先週の主要ドルストレート通貨ペアの相関性】
これに対し、先週のドル円、クロス円はAUDJPYとNZDJPYなど相関性の高い組み合わせもありますが、全体的には、主要通貨の対円の動きはあまりまとまりがなかったようです。
【先週のドル円、クロス円の相関性】
先週の主要通貨と米国株価指数(ここでは代表的なUS500との相関性を表示しています)の相関性を見ると、株価指数とドルㇲトレートは多少の相関関係を見出すことができるのに対し、株価指数とクロス円では相関性の低い動きとなりました。
【先週の主要銘柄と米国株価指数の相関性】
OANDA、先物市場のポジション、主要銘柄の値動き
FX
米ドル/円(USD/JPY)
先週のドル円は序盤は上値の重い推移となりましたが、その後はジリジリと上昇した後、ADP雇用統計の結果を受けて110円台に乗せる動きとなったものの、その後は政府発表の雇用統計の結果を受けて急落する動きとなり、上昇分の殆どを吐き出す動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、買いポジションの比率が高い中、直近の下落により含み損を抱えた買いポジションが増えており、上昇した水準では安堵の利益確定売り、安値を切り上げる動きとなると、損切りの売りが増え、上値の重い推移が続く可能性に注意が必要となりそうです。
ただし、経済指標の結果により、短期間で比較的大きな下落となった後だけに、その後の動きを見守りたいところです。買い戻しがどの程度入るか、下値を探る動きとなった場合は、どの程度まで下押しするか、反発に転じた際は直近の高値水準を突破できるか等に注目しながら、根気強く方向感を探っていきたいです。
【USD/JPYの4時間足チャート】
表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3、OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足
先週火曜日時点の投機筋の円の通貨先物ポジションは、買いと売りの双方が増加し、ネットすると円売りポジションの比率が前週に続き少し減少となりました。依然として円売りポジションが優勢な状態が続いており、今後もこの状態が続くかを見守りたいところです。
【投機筋の通貨先物市場の円のポジションの推移(最終更新日2021/6/1)】
ユーロ/米ドル(EUR/USD)
先週のユーロドルは序盤は底堅い推移となり、1.225付近まで上昇したものの、その後は上値が重い推移が続き、1.21に迫る水準まで下押しした後、米国雇用統計の発表を受けて少し反発する動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売りポジションの比率が高いものの、下落基調が続いたことにより、含み損を抱えた買いポジションが比較的多く、上昇した水準では安堵の利益確定売り、安値を切り下げる動きとなると損切りの売りが増え、上値が重い推移が続く可能性に注意が必要となりそうです。
4時間足チャートを見ると、高値を切り上げることができず、直近の安値を切り下げるような動きとなっており、下落基調が続く可能性を見出すことができそうです。安値を結んだラインや直近のサポート水準を守れるか、また上値を探る動きとなった場合は高値を切り上げることができるか等に注目しながら、下落基調継続の可能性を探っていきたいところです。
【EUR/USDの4時間足チャート】
表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3、OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足
先週火曜日時点の投機筋の通貨先物市場のユーロのポジションは、買いポジションが増加、売りポジションが減少となり、ネットすると買いポジション比率が前週に続き増加となりました。
このところ、ユーロ買いポジションの増加傾向が続いており、今後も増加傾向が続くかを見守りたいです。
【投機筋の通貨先物市場のユーロのポジションの推移(最終更新日2021/6/1)】
ポンド/米ドル(GBP/USD)
先週のポンドドルは序盤は底堅く、1.425付近まで上昇する動きとなったものの、その後は下落に転じ、1.41を割り込む水準まで下押した後、雇用統計の結果を受けて1.42付近まで反発する動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、依然として高値圏で推移していることもあり、売りポジション比率が多い中、その多くが含み損を抱えており、下押した水準では安堵の買い戻し、上値を探る場面では損切りの買いが増え、底堅い状態が続く可能性を見出すことができそうです。
4時間足チャートを見ると、横ばい推移が続いており、均衡が上下いずれに崩れるかにまずは注目したいところです。
【GBP/USDの4時間足チャート】
表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3、OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足
先週火曜日時点における投機筋のポンドの通貨先物市場のポジションは売買の双方が増加となりましたが、ネットすると買いポジション比率が少し減少となりました。
依然として買いポジションが優勢な状況が続いてはいますが、伸び悩む状態が続いており、今後の傾きの変化に注目したいところです。
【投機筋の通貨先物市場のポンドのポジションの推移(最終更新日2021/6/1)】
豪ドル/米ドル(AUD/USD)
先週の豪ドルは序盤は底堅い推移となりましたが、後半は上値の重い推移となり、直近のサポート水準である0.7675を割り込み、0.764付近まで下押しした後、米国雇用統計の結果を受けて大きく反発する動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売りポジション比率が少し多い中、週末の反発により、含み損を抱えた売りポジションが増えており、下押しした水準では安堵の買い戻しが上値を圧迫、高値を切り上げる動きとなると損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。
ただし、経済指標の影響による短期間での大きな上昇後ということもあり、少し様子を見たいところです。反発地合いが続き、直近のレジスタンス水準となる0.7775付近を突破できるか、下押しの際は直近のサポート水準の0.764付近を守ることができるか等に注目しながら、根気強く方向感を探っていきたいです。
【AUD/USDの4時間足チャート】
表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3、OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足
先週火曜日時点の投機筋の通貨先物市場における豪ドルのポジションは売買双方のポジションが増加となり、ネットすると売りポジションが少し増加となりました。
依然として売買の偏りは少ない状態ですが、今後、いずれにポジションが傾くかに注目したいところです。
【投機筋の通貨先物市場の豪ドルのポジションの推移(最終更新日2021/6/1)】
CFD
米国S&P株価指数500(US500)
先週のUS500は後半は上値の重い推移となりましたが雇用統計の結果を受けて反発する動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、高値圏での推移が続いていることもあり、含み損を抱えた売りポジションが多く、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。
4時間足チャートを見ると、高値圏で伸び悩む推移が続いていますが、しっかりと高値を切り上げることができるか、下押しの際は直近のサポート水準や安値を結んだラインを守れるか等に注目しながら、方向感を探っていきたいところです。
【US500の4時間足チャート】
表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3、OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足
S&P500の先物市場における投機筋のポジションを見ると、買い、売りが双方増えましたが、ネットすると、買いポジションが増加となりました。このところ、ジリジリとではありますが、買いポジションの上昇傾向が続いており、今後も続くかを見守りたいところです。
【投機筋の先物市場のS&P500 consolidatedのポジションの推移(最終更新日2021/6/1)】
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