債券の基礎

イールドカーブとは何か?形状の見方や金利の期間構造理論などを解説

個々の債券は残存期間が異なっています。横軸を債券の残存期間、縦軸を複利利回りにしてそれぞれの結んだ曲線をイールドカーブもしくは利回り曲線と呼び、長期金利分析になくてはならないもののひとつとなっている。


イールドカーブとは


債券市場の動きはそのまま長期金利の動きとなるが、個々の債券は残存期間が異なっており、たとえば国債ならば1年以下の短期国債(現在は国庫短期証券としてFBと統合発行されている)から期間40年の国債まで、それぞれの利回りが存在する。それを複利利回りにして横軸を残存期間、縦軸を金利にしてプロットして結んだ曲線がイールドカーブ、日本語で「利回り曲線」と呼ばれるものである。

画像1/イールドカーブ(2021年8月31日の10年まで、財務省の金利情報を元に著者作成)

イールドカーブとは

イールドカーブを見ることで、残存期間に応じた利回り分析が可能となる。つまり債券市場における金利構造をチェックすることが可能となる。 イールドカーブによって市場参加者の金利感が見えてくる。

現在の金利水準に比較して、先行き金利は上昇していくと考えていれば、期間の長い債券の利回りが高くなることで、イールドカーブの形状は右肩上がりになる(順イールド)。これをスティープニングと呼ぶ。これは先行き金利が上昇すると予想すると、現在の低い利回りの債券はなるべく短期債で運用しようとすることによって長期債より短期債が買われるため、短い期間の利回り低下圧力がかかるためである。

これに対して、現在の金利水準に比べて、今後金利が低下し続けると読めば金利は長い期間のものほど下がることで、イールドカーブはフラット化、もしくは右肩下がり(逆イールド)になる。 債券は長い期間のものほど同じ利回りの変動に対して価格が大きく動く、という特性を持っている。

つまり残存期間が長いほどリスクが高くなることで、その分利回りにプレミアムがついていると考えられている。このため、イールドカーブは通常は右肩上がりとなる。


イールドカーブの形状


イールドカーブの形状には、中央銀行の金融政策も大きく影響する。イールドカーブ上の一番左側にある最も期間の短いものは中央銀行の政策金利に近いものとなる。そして、長期金利は物価や経済動向を見ながら、中央銀行が短期金利をどういった水準に持って行くのかを予想して形成される側面がある。

金融政策で緩和から引締に移る、つまり利下げから利上げに転じた際には、このイールドカーブのフラット化もしくは逆イールド化することがある。これは足元の金利が引き上げられるものの、景気の減速や物価上昇率の鈍化期待の高まりなどによって長めの金利は低下に転じるためです。

ヘッジファンドなどの投資家は、このイールドカーブの形状を見ながら、短期債買いと長期債売りといったトレードを組み合わせて行っている。これは何らかの要因によるイールドカーブの歪みを見つけて、その歪みの修正を狙っての売買手法ともいえる。このような仕掛け的な動きによってイールドカーブが変化してくることもあるため、注意も必要となる。


金利の期間構造理論


債券のイールドカーブがどのようにして決まるのかを説明する代表的な仮説が3つある。「純粋期待仮説」「流動性プレミアム仮説」「市場分断仮説」である。


3つの仮説


「純粋期待仮説」は、現在の金利の期間構造は、将来の金利の期待値つまり予測値によって決定されるという考え方である。右肩上がりのイールドカーブは、市場参加者が将来、金利が上昇すると予測していることを示す。反対に右肩下がりのイールドカーブは、市場参加者は将来金利が低下すると予測していることを示すというものである。

これに対して「流動性プレミアム仮説」とは、期間の長い債券ほど価格変動リスクが大きいことで、他の条件が同じであれば、その分だけ長期の金利は短期の金利に比べてプレミアムがつくため長期の金利が高くなるとの仮説である。

もうひとつの「市場分断仮説」とは、債券市場は市場参加者、この場合は主に投資家ということになるが、債券を購入する背景になっている資金の性格によって、買い付ける債券の期間が決定されるため、イールドカーブの居所は投資家の需給関係で決まるという理論である。

いずれの仮説もイールドカーブを形成しているひとつの要因となっていると思われるが、ここでは特に「市場分断仮説」について具体的に見てみたい。


市場分断仮説


たとえば銀行と生保という2つの運用会社を比較してみよう。銀行が国債などの債券を買い付ける資金の背景にあるのは、私たちの預金となる。預金で集められた資金は貸し出しなどでも運用されるが、一部は国債などの債券でも運用されている。

預金として私たちが銀行に置いておく期間は、定期預金などを利用したとしても2年から3年といったケースが多い。実際には定期預金も乗り換えなどもがあり、普通預金でもある程度の残高を残しておくこともあって、銀行は3年よりはもう少し長めの期間で運用することが可能となる。

このためメガバンクを含め銀行が買い付ける国債は比較的中期ゾーンが多くなる。国債で言えば2年や5年物となる。ただし、あくまでも保有する債券ポートフォリオ全体の平均残存年数が短いということで、10年や20年といった期間の長い国債を買い付けることもある。

ゆうちょ銀行も同様。銀行の資金運用は貸し出しなどが主でだが、ゆうちょ銀行はその資金の多くが国債で運用されており(将来は融資も視野の模様)、しかも資金量が巨額なことから比較的期間の短い国債に対しての有力な買い手となっている。

これに対して生命保険料として払い込んでいる私たちの資金は、運用している側からすれば比較的長期の運用が可能なものとなる。このため、生命保険会社は長期から超長期と呼ばれる債券を中心に購入している。もちろん長い期間の債券ばかりでなく、短い期間の債券も購入しているが、平均残存年数が銀行に比べて長くなるのは確かである。

これは巨額の資金を運用しているかんぽ生命についても同様となる。年金の運用機関もその資金の性格から期間の長い債券を主に購入している。しかし年金の資産運用は、その多くがインデックス追随型運用(パッシブ運用)と呼ばれるものとなっている。

市場に現存する債券全体を基にした指数が証券会社などによって算出され、そのインデックスに応じての運用を行っている。同じ年金でも海外、特に欧州系の年金などは日本の国債などでも資金を運用しているが、こちらは期間の長い30年や40年の国債などでも運用している。

ただし、年金の運用の変化に加え、日銀のマイナス金利政策により、このあたりの構図に変化が出ている。基本的に投資家はマイナス金利の国債を購入して運用するようなことは避ける。しかし、残存10年近くまでの国債の利回りもがマイナスとなってしまい、超長期債と呼ばれる長い期間の国債の利回りも大きく低下してしまったことで、投資家は債券での運用がしづらい状況に陥っている。


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イールドカーブ


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米国債利回りのイールドカーブを表示します。イールドカーブとは日本語で「利回り曲線」と呼び、債券の利回り(金利)と償還期間をグラフで表示したものです。基本的にイールドカーブのグラフは右が高い状態なら、経済が上手く回っていると判断できます。

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本記事の監修者・久保田博幸(くぼた・ひろゆき)


慶応義塾大学法学部卒業後、国内の証券会社に入社。1986年から14年間以上にわたり、債券現物・先物のディーリングを担当する。債券市場のホームページの草分け

「債券ディーリングルーム」を開設。また、幸田真音著『日本国債』(講談社)の登場人物のモデルとなる。専門は日本の債券市場の分析。特に日本国債の動向や日銀の金融政策に詳しい。現在、金融アナリストとしてヤフーニュース(個人)に記事を配信している。また「牛さん熊さんの本日の債券」というメルマガを配信中。日本アナリスト協会検定会員。主な著書に『日本国債先物入門』(パンローリング)、『債券の基本とカラクリがよーくわかる本』(秀和システム)、『中央銀行と金融政策がよくわかる本』(秀和システム) など多数。

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