FX初心者の方

FX市場におけるファンダメンタルズ分析の基本

ファンダメンタルズ分析というのは政治、経済等、FX市場に影響を与えるあらゆる事象を材料に分析を行う分析方法です。

FX市場に影響を与える材料は多く、様々なアプローチ方法がありますが、FX通貨の取引であるため、その通貨を管理する中央銀行の金融政策を中心に考えるという方法があります。

ここではこの中央銀行の金融政策に注目したアプローチ方法を中心にご案内します。

FXのファンダメンタルズ分析のイメージ画像

 

中央銀行とは?


中央銀行のイメージ

 

中央銀行とは、通常の銀行とは異なり、国や一定の地域の金融システムの中核となる機関です。

日本では日本銀行が中央銀行に該当します。

中央銀行の主な機能は次の3つです。

①貨幣の発行

その国、地域で使用される銀行券(貨幣)を発行します。
また、通貨の供給量を調整することで通貨の価値を一定に保ち、国内、域内経済が安定的に発展するように下支えすることを目標に金融政策を行います。
簡単にいうと、お金が市中に出回る量を調整しているということです。

 

②銀行の銀行

銀行から預金を受け入れ、貸し出しを行うほか、銀行間の資金決済を行います。その国、地域での金融システムを安定的に稼働させる役割を担っています。

③政府の銀行

政府の口座を管理しており、国民からの税金等の受け入れや国債の償還、利払いなど政府の収入と支出を行います。

中央銀行の機能

 

金融政策とは?


金融政策とは中央銀行が行う通貨の流通量を調整するための政策です。

中央銀行はこの金融政策を通じて、物価を安定的にコントロールし、経済発展を下支えすることを目標としています。

金融政策は大きく分けると景気が悪くなり、物価の上昇率が低下した際に行われる金融緩和、景気が加熱し過ぎ、物価の上昇率が高くなり過ぎた際に行われる金融引き締めの2種類に分けられます。

 

金融緩和とは?


最初に、景気が悪化した場合に行われる「金融緩和」というのがどのような金融政策なのかを確認してみましょう。

金融緩和政策の代表的なものは政策金利の利下げ量的緩和政策です。

金融緩和では主に基本的には政策金利の利下げを行いますが、それだけでは景気の回復、物価上昇率の引き上げが難しいと中央銀行が判断した場合に量的緩和が行われます。

このため、政策金利の調整を「伝統的政策」、量的緩和を「非伝統的政策」などということがあります。

 

政策金利の利下げ


政策金利の利下げは代表的な金融緩和政策です。
政策金利を下げることにより、景気を刺激し、物価の上昇を促す金融政策です。

景気が悪くなると、銀行は貸したお金が返ってこなくなる可能性が高くなるので、金利を高くしたり、審査を厳しくしたりするので、お金を借りにくくなります。

つまり、世の中のお金の流れが鈍くなります。

景気が悪いので先行きが不安で企業は設備投資を見送ったり、採用を控えたりし、お金を使わなくなります。

雇用が減ったり、給料があまり増えなくなるので、個人も同様にお金を使わなくなります。

\つまり、モノの需要が減少します。

このような状況となると、値段を下げてでもモノを売ろうとします。

このため、物価が低下します。

物価が低下すると、利益が削られるので、企業は苦しくなります。

給料を上げることも難しくなるので、従業員も苦しくなります。

そして、さらに景気が悪化します。

この悪循環から脱するために、中央銀行は金融政策を行います。

景気が悪化した場合は、政策金利を下げて、銀行が低い金利で資金を調達できるようにして、銀行が企業や個人にお金を貸しやすい環境を作ります。

お金が借りやすくなると、企業は資金を調達して設備投資を行なったり、新規事業に参入したり、お金を使うようになります。
個人でも住宅ローンなどの金利が低下するので、大きな買い物をしやすくなり、また付随する消費も活発化します。

例えば、住宅を買うと、家具を買ったり、電化製品を買ったりします。また、自動車を買ったら、自動車用品を買ったり、新たに保険に入ったり、駐車場を契約したり、ドライブに出かけたりとどんどんお金を使うようになります。

消費が活発になり、モノが売れるので、企業は必要以上の値下げを行わなくなり、物価も上昇しやすくなります。

 

政策金利を下げると、このように景気を刺激し、物価の上昇を促す効果があります。

政策金利

 

物価が下がるとなぜ悪い?


単純に考えると物価が下がることはモノを安く買うことができて良いことのような気がします。

もちろん、欲しいものが安く買えることは良いのですが、モノの値段が下がり続けるというような事態は、次のような理由で経済にとって悪影響な部分の方が大きくなります。

 

お金を使わなくなる

モノの値段が下がり続けるということは、一方で対価となるお金の価値が上がっていくと言い換えることができます。

お金を使わず、待っていればもっと安く買うことができるという状況です。

 

【デフレのイメージ】

デフレのイメージ画像

 

このような状況に陥ると、誰も必要以上にお金を使わなくなり、さらに景気が悪化する可能性が高まります。

物価が上昇するインフレーションに対し、この物価が下がり続ける状況をデフレーションといいます。

少し前までの日本はこのデフレーションの状態に陥っており、なかなか景気が回復せず、苦労したというのは記憶に新しいと思います。

経済に興味のない方でも、「デフレーション」や「デフレ」といった単語をニュースなどで聞いたことがあるという方も多いと思います。

 

デフレマインド

物価が下がり続けている状況のときは生活費も徐々に下がっている状況であるため、給与もなかなか上がりません。

不況ということもあり、安い給与でも働き手が見つかるので、企業は高いお金を払う必要がなくなります。

お金の価値が上がっている状況ということは、給与が同じ金額であっても実質の給与は上がっている状況です。

物価が下がっているので、企業も同じ売上数量の場合は売上減少となり、苦しくなり、給与を上げることが難しくなります。

給与が上がらなければ、今以上に買い物をしようと思う人が減るだけでなく、仕事をやる気にもなりません。

そして、景気はさらに悪化していきます。

負のスパイラルがどこまでも続いてしまう可能性が出てきます。

 

物価が上昇すると・・・

物価が緩やかに上昇する場面では逆の状況となります。

モノの値段が徐々に上がり、反対にお金の価値が下がっていく状況です。

早く買った方が実質的に安く買えるのでお金を使いやすくなります。

 

【緩やかな物価上昇のイメージ】

インフレのイメージ

企業は、銀行から借りてでも早く設備投資を行おうと考えますし、物価が徐々に上がるので、同じ数量のモノを売っても将来の売上増加が見込めるので、賃金を上げたり、採用を行なったりしやすくなります。

採用が増え、人材が不足すると、企業は少し高いお金を払ってでも人を採用しようとします。

このため、給与が上昇しやすい環境となり、個人の消費も活発になります。

このように緩やかな上昇は経済にとってはプラスに働くことが多いです。

先進国の中央銀行では概ね2%程度を目安に一定の物価上昇率を維持しようとするのはこのためです。

国によっては中央銀行の責任として具体的な数字を掲げている国もあります(インフレ・ターゲット政策)。

 

量的緩和とは?


量的緩和とは国債などの資産を中央銀行が市場で購入し、市場にお金を流し込み、市中にお金が出回りやすい状態にする金融政策です。

政策金利を下げるだけでは、景気悪化、物価の下落を抑えることができない場合に主に用いられます。

リーマンショック後の景気低迷期に主要中央銀行で政策金利の低下余地がなくなった場面で用いられました。

 

金融引き締めとは?


金融引き締めとは金融緩和の逆の政策です。

景気の加熱を防ぐために用いられます。

景気が良くなること自体は良いことですが、良くなりすぎるのは問題です。

景気が加熱し過ぎると、必要以上に物価が上昇し、物価の上昇が抑えられなくなる状態、所謂バブル状態に陥ってしまうからです。

バブル景気になると、その後に訪れる景気後退期に大きなダメージとなる可能性が高くなります。

金融引き締め

 

よって、景気が良くなり過ぎた場合も、中央銀行は金融政策を行い景気の加熱を抑えようとします。

この際に行われる金融政策が金融引締めです。

代表的な金融引き締め政策は、政策金利の利上げです。

また、量的緩和を行なっている国では量的緩和を縮小することも引き締めに該当します。

 

政策金利の利上げ


利下げの逆で、金利が上がると、資金調達の費用が高くなるため、市中に出回るお金が減少します。

つまり、世の中に出回るお金の量を抑え、景気の加熱を防ぐ効果に期待する金融政策です。

一度に大きく金利を上げてしまうと市場が混乱したり、不況のきっかけとなることもあるため、中央銀行は少しずつ回数を分けて利上げを行うケースが多いです。よって、最初の利上げの可能性が高まる局面では、その後の継続的な利上げへの期待もあり、買われやすいという傾向があります。

この金融政策による変動を狙い、FX市場では、中央銀行が今後、どのような金融政策を行おうとしているのかに市場の注目が集まり、政策金利が上がりそうな情報が出てくると過敏に反応することがあります。

 

量的緩和の縮小


量的緩和を行なっているような場合は利上げの前に量的緩和政策で毎月購入している資産の額を減らすなどして、金融引き締めを行います。

国債等の債券を買っていた大きなプレイヤーに制限がかかるため、債券等の買い手が減り、価格が低下し、利回りが上昇し、市中の金利引き上げに効果を発揮します。

 

中央銀行の動向をチェック


中央銀行の金融政策に関する情報はどこでチェックすれば良いのでしょうか?
また、どのような情報にFX市場は注目しているのでしょうか?
ここでは中央銀行から発せられるメッセージのほか、主な経済指標についてご案内しておきます。

 

中央銀行からのメッセージ


中央銀行は、定期的に会合を行い、経済の状況に合わせて金融政策の検討を行う会合を行うのが一般的です。

その会合で金融政策の変更が行われるとFX市場に大きなインパクトとなることが多いほか、変更が行われなかったとしても、会合の結果を発表する声明文や中央銀行関係者の記者会見などでのコメントから、今後の金融政策を占う上で重要なサインなどが出てくることがあるため、注目が集まります。

中央銀行の金融政策に注目が集まっているときは、細かい文言が一つ変わるだけで市場が大きく反応することがあります。

また、各中央銀行が公表する会合の議事録や経済見通しのレポートなども中央銀行の金融政策の方向性を考える上で重要な情報が記載されていることもあるため、注目されます。

 

【主な中央銀行からのメッセージ】

・声明文
・記者会見
・会合議事録
・経済見通しレポート

 

主要経済指標


中央銀行が意思決定を行うための判断材料の一つに主要な経済指標があります。

景気、物価の状況を主要な経済指標を元にチェックをしていきます。

 

【物価指数】

中央銀行は通貨の価値を一定に保つことを第一の目標として金融政策を行なっています。このため、各国の中央銀行では消費者物価指数を中心とした物価指数を重視する傾向があります。

 

【GDP】

国の経済成長率を把握することのできる代表的な指標であるGDPは中央銀行が注目する重要経済指標の一つです。

ただし、GDPの発表は四半期毎ということで、速報性に欠けるということもあり、後述の先行する各種経済指標が注目されます。

 

【雇用関係の経済指標】

米国やオーストラリアのように物価の安定に加えて、雇用の最大化を目標に掲げている中央銀行は失業率や雇用者数の変化などの労働市場に関するデータへの関心が他の国に比べ高い傾向があり、FX市場でもこれらの国の雇用データの結果に大きく反応することがあります。

 

【先行するの経済指標】

前述の経済指標中心に景気や物価の動向を探りますが、FX市場ではこれらの経済指標に先行する経済指標に注目が集まります。

例えば、物価が上昇する前に景気の改善が見られたり、原油価格などの資源価格が上昇する傾向があります。

また、GDPは四半期毎に発表されますが、毎月発表される鉱工業生産や小売売上等の各種経済指標の結果が先行しており、GDPの速報値が発表されるころには大まかな結果が予想できてしまうため、毎月の経済指標の結果に注目が集まります。

 

まとめ


これらの経済指標の動向と中央銀行関係者からのコメントを照らし合わせながら中央銀行の動向を探っていくのがオーソドックスな方法です。

簡単にいえば、景気が良くて利上げが必要な国の通貨が買われ、景気が悪く、利下げや量的緩和が行われる国の通貨は売られるという傾向があり、経済の状況、中央銀行関係者の言動などから、今、中央銀行がいずれに向かっているかを考えていく分析方法です。

金融政策の大きな傾向を探っていく分析という性質上、1日や2日の短いトレンドではなく中長期のトレンドを探っていくための分析となり、短期トレードを考えている方よりも中長期のトレードを考えている方向けの分析方法であると思います。


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