用語解説

公開日:2017年3月21日 15時27分
最終更新日:2023年4月7日 09時47分

CPI(消費者物価指数)とは?計算方法やアメリカCPIとの違いを解説


CPI(消費者物価指数)とは物価の動きを測る物差しとして使われ、その国の中央銀行が金融政策を決定する際に注目する重要経済指標の一つです。
世界各国で発表されており、どの国がインフレ(インフレーション)またはデフレ(デフレーション)の状況にあるのかを把握することができます。

    ・インフレ(インフレーション)とは?

    インフレとはモノの価値が継続して上がっている状態のことを指し、好景気のときに発生しやすい特徴があります。

    ・デフレ(デフレーション)とは?

    デフレはモノの価値が継続的に下がっている状態のことを指し、不景気のときに発生しやすい特徴があります。

各国の中央銀行は自国の通貨の価値を安定的に維持し、経済成長を下支えすることを責務としているので、物価の上昇率を一定に保つために金融政策を行います。
そして、中央銀行が金融政策を検討する上で注目するのが、このCPI等(※米国の中央銀行FRBはPCEデフレーターという物価指数を注視している)の物価データです。

インフレ率が目標値を上回る状態が続くと、物価の上昇を抑えるために政策金利の利上げ等の金融引締めを行い、インフレ率が目標値を下回る状態が続くと、物価の上昇を促すため、利下げや量的緩和等の金融緩和を行います。

この中央銀行の意思決定は金融市場に大きな影響を与えるため、主要な判断材料となるCPI等の物価指標にも注目が集まり、発表後に市場が大きく反応することがあります。
このため、CPIは、FXやCFDの取引を行う場合、注目しておきたい経済指標の一つです。

本記事では、初心者の方向けにCPIとはどういった経済指標なのか、算出方法、過去の推移、為替相場に与える影響などを詳しく解説します。

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1.CPI(消費者物価指数)とは?

CPIとは「Consumer Price Index」を略した言葉で、日本語で「消費者物価指数(しょうひしゃぶっかしすう)」と呼びます。
消費者が購入する商品やサービスの価格を調査し、過去と比較してその変動を指数値で表す経済指標です。

ある時点を基準(基準年)とし、これと同等の商品やサービスを購入した場合に、どのくらい変動があるのかを数値化して表します。
世帯の生活様式や消費者の嗜好の変化によって変動する生活費などを測定するものではなく、純粋に物価がどのくらい変動しているかを測定する目的があります。

    ・主要な中央銀行が考えるインフレ率とは?

    主要な中央銀行では、経済成長には緩やかなインフレ状態が適していると考えています。

    これは、インフレ状態のときは、企業の販売価格が上昇し、売上が増加するので、設備投資が増えるほか、従業員の給料が増加し、給料が増えた従業員が消費行動を行い、さらに企業の売上が増加し需要が増えるので、販売価格を少し上げても売れるため、物価が上昇という好循環を生み出すことができるからです。

これに対し、デフレのときは、企業の販売価格が低下し、売上が伸びにくいため、設備投資や従業員の給与を増やすのが難しくなり、消費が伸び悩みます
企業は値下げをしてでも売上を確保しようと考えるため、さらに物価が下落というスパイラルに陥ってしまいます。

ただし、インフレ率が高くなりすぎると、バブルに発展し、その後の経済に大きなダメージを与えたり、通貨が信用を失い、さらにインフレ率が上昇し、ハイパーインフレを引き起こすリスクがあるので、中央銀行は緩やかなインフレ率を維持しようと努力しています。

先進国の主な中央銀行では、この「緩やかなインフレ」を前年比2%程度の物価上昇率と考えています。

米国と日本のCPI(消費者物価指数)の違い比較

CPIは各国が発表していますが、それぞれで若干の違いがあります。
ここでは日米の比較をしてみます。

日本 米国
発表元 総務省統計局 米労働省労働統計局
発表時期 毎月19日を含む週の金曜日 毎月15日前後
総合CPI 全対象品目 全対象品目
コアCPI 生鮮食品を除く 生鮮食品及びエネルギー除く
コアコアCPI 生鮮食品及びエネルギー除く

総合CPIは対象品目全てを計算に組み入れています。

また、変動の激しい品目を除いたものをコアCPIやコアコアCPIといった俗称で呼ぶことがありますが、コアCPIは日本と米国で違いがあります。
日本のコアCPIでは生鮮食品を除いていますが、米国のコアCPIでは生鮮食品及びエネルギーを除いています。
日本のコアコアCPIは米国のコアCPIと同じく生鮮食品及びエネルギーを除いています。

  • 米国のコアCPI = 日本のコアコアCPI

生鮮食品は、天候の良し悪しで大きく価格が変動するので、状況によっては正確な物価の変動を分析できない恐れがあります。

また、エネルギーも海外要因によって変動する原油価格の影響を受けるので、これも除外することによって、物価変動を測定しやすくなります。

これらの変動の激しい項目を除外したデータを確認することで、全体的な物価変動の基調を把握しやすくなります。

CPIとPPI(生産者物価指数)の違い

各国のインフレ(モノの価値が上昇する)動向を把握する手段として、PPI(生産者物価指数)があります。
こちらもCPIとともに注目されている経済指標の一つです。

PPIは「Producer Price Index」の略で、日本語で「生産者物価指数」と呼びます。

生産者が出荷した製品や原材料を対象とし、その販売価格の変動を算出した経済指標です。
CPIは「買い手」側の価格変動を表すのに対して、PPIは「売り手」側の価格変動を表します。

CPI Consumer Price Index 消費者物価指数 消費者が購入をする価格、つまり最終価格の動向を示した指数
PPI Producer Price Index 生産者物価指数 製造業者の出荷時点の価格の動向を示した指数 日本では「企業物価指数」に相当

CPIとPPIの位置関係はこのように整理できます。
基本的に、PPIの基調の変化は最終的にCPIに反映されていくので、PPIはCPIの先行指標の一つと見ることができます。

CPIとPPIの位置関係

CPI(消費者物価指数)の「基準年」とは?

「基準年」とは、CPIの変動を算出する際に基準となる年です。
基準となる年の物価を「100」とし、CPIの変動率を算出します。
(日本の場合、2022年現在では2020年の1年間が「基準年」)
CPIの算出方法については、「2.CPI(消費者物価指数)を算出する計算方法」で詳しく解説します。

なお日本の消費者物価指数の場合、基準年は西暦の末尾が「0」と「5」を基準時とし、5年ごとに改定(基準改定)されます。
時代の変化とともに新しい商品やサービスの出現によって、消費者の嗜好は変化していくものです。
時代に合った最新の数値を表すために、一定の周期で基準年の見直しを行っています。

また基準年を改定する際は、指数に採用する品目やウエイト(家計の消費支出に占める割合)なども見直されます。
(2020年の日本の消費者物価指数では、582品目が採用)

続いて、CPIがどのような計算式で算出されているのかを見ていきましょう。

2.CPI(消費者物価指数)を算出する計算方法

CPIは、一般的にラスパイレス算式を使い算出します。

    ・ラスパイレス算式とは?

    ラスパイレス氏が考案した物価指数の計算式です。
    ラスパイレス算式は、以下の通りです。

    ラスパイレス氏が考案した物価指数の計算式

    各記号の意味は、以下の通りです。

    • ・個別品目=i
    • ・基準時の価格=pio
    • ・比較時の価格=pit
    • ・基準時の数量=qio

    つまり、「(比較時の価格×基準時の数量÷基準時の価格×基準時の数量)×100」で消費者物価指数の比率を求められます。

    たとえば、基準時のおにぎりが1つ100円で100個売れたとしましょう。
    比較時では、おにぎりが1つ110円で90個売れたとします。
    上記計算式に当てはめると、「(110×100÷100×100)×100=110」となります。
    基準となる物価は「100」とするので、過去から現在では物価が10%上昇したと分かります。

    ※ラスパイレス式では基準時の数量をウェイトとして加重平均するので、比較時の「90個」は考慮されません。

CPIは基準年(過去)の物価から、今の物価がどの程度変化したのかを表します。
つまり、過去と同じ商品やサービスを現在購入した場合「どのくらいお金がかかるのか?」という過去の視点から現在を見たものです。

さて、過去から現在(2022年)までのCPIがどのように推移してきたのかを見てみましょう。

3.CPI(消費者物価指数)の推移

以下は、日本のCPIの推移チャートです。

日本のCPIの推移チャート

2021年の消費者物価指数は携帯電話料金の引き下げの影響もあり、低いインフレ率が続きました。
しかし、2022年には上昇が続き、2022年9月20日に発表された2022年8月の日本のコアCPI(消費者物価指数)は前年比+2.8%を達成。

これは消費税増税効果で上昇した2014年〜2015年以来の高い上昇率となりました。

ただし、日本銀行は、ウクライナ情勢等による商品価格の上昇や円安の影響が大きく、需要増加による上昇分は限定的と考え、金融緩和を続けています
(2022年9月時点)

続いて、米国のCPIの推移チャートを見ていきましょう。

米国のCPIの推移チャート

2022年9月に発表された2022年8月の米国のCPI(消費者物価指数)は前年比+8.3%と記録的な物価上昇が続いています。

米国の中央銀行であるFRBは、当初は物価の上昇は一時的なものと静観していましたが、コアCPI※が前年比6%を超えてきた2022年3月から政策金利の引き上げを始め、現在も継続して利上げを行い、物価上昇を抑え込もうとしています
(2022年9月時点)

政策金利の変化は為替相場に大きな影響を与えます。
どのように影響を与えるのかについて見ていきましょう。

※FRBは金融政策の決定を行うにあたり、CPIよりもPCEデフレーターを注視していますが、市場では、PCEデフレーターに先行するCPIに大きく反応する傾向があります。

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4.CPIは為替相場にどのような影響を与えるのか?

これまでの話を少し整理します。

  • ・CPIは消費者がモノやサービスを購入する際の価格の動向を測る経済指標
  • ・CPIの上昇が続けばインフレ
  • ・CPIの下落が続けばデフレ
  • ・適度な経済成長には、緩やかな物価上昇が必要
  • ・主要国の中央銀行は2%前後のインフレ率を目標とし、金融政策を行う

CPIと金融政策

中央銀行はインフレ率を目標値に誘導するため、金融政策を行います。
一般的に、金融引締め(政策金利の引き上げ、量的緩和の縮小)を行うと、お金を借りる人が減るので、市中に出回るお金の量が減り、モノやサービスの需要が抑制されます。
これにより、モノやサービスの価格が低下し、物価上昇を抑えることができます。

反対に、インフレ率が低いときは、金融緩和(政策金利の引き下げ、量的緩和等)を行うと、お金を借りやすくなり、市中に出回るお金の量が増えるので、モノやサービスの需要が増え、価格が上昇しやすい環境を作ることができます。

中央銀行はこのように金融引き締めと金融緩和を行い、インフレ率をコントロールしようとします。

ただし、物価変動要因により、金融政策の効果に差が生じる場合があります。

物価変動要因は主に次の2つのタイプに分けることができます。

①需要の増減に起因

需要が増加したことにより、価格が上昇、または需要が減少したことにより、価格が下落するケースです。

②コストの増減に起因

資源価格の騰落や外国為替の変動、人件費等のコストの増減により価格が変動するケースです。

このうち、①の物価変動は、金融政策の効果が期待しやすいのに対し、②の物価変動は金融政策の効果は限定的と考えられています。

しかし、かつての日本のように金融緩和を続けてもなかなか需要が増加せず、デフレが続くケースなど、教科書通りには行かないこともあり、中央銀行の担当者を悩ませています

金利と為替相場の関係

一般的に経済が安定している状態のときは、金利の高い国には投資資金が流入しやすい傾向にあります。

なぜなら、金利の高い国の方が投資資金に対して、より大きなリターンを狙うことができるからです。

単純に銀行に金利を預け入れる例で見てみます。

米国 日本
金利 2.5% 0%
100万円を1年間運用すると 102.5万円になる 100万円のまま

(例では話を単純にするため、為替レート、税金などは考慮していません。)

例えば、米国で預金をすると金利が2.5%、日本で預金をすると金利が0%の状態の場合、100万円を1年間運用したとすると米ドルでは1年後に102.5万円、日本円では100万円のままです。

どちらで資産を運用したいと思うでしょうか?

おそらく米ドルと答える人の方が多いでしょう。

このように、「日本よりも米国でお金を運用したい」という人が増え、投資資金が米国に流入します。

さらに、日本の金利が変わらないまま、米国の金利がさらに上がる場合はどうでしょうか?

高い利回りを求めて、米国で運用するという人が増えることが想定されます。

同様に、外国為替市場でも金利の低い円を売って、ドルを買うという金利目的の取引が増えていきます。

このように投資資金は金利の高い国に流入しやすい傾向があります。

これに対し、景気が減速したり、市場が不安定になったときは、この投資資金の逆流が起こるケースがあります。

金利を狙って投資していた資金を引き上げる行為が活発化するということです。

よく市場で耳にする「リスク回避の円買い」などが該当します。
短期的で小規模な場合もあれば、リーマンショック以前の円キャリートレードで構築された膨大なポジションの解消のような大規模なものになることもあります。

金利上昇の原因に注目

金利の高い国に資金が集まるのであれば、FXで金利の低い通貨を売って、金利の高い通貨を買えば、必ず儲かるのかといえば、それほど単純な話ではありません。

金利上昇には良い上昇と悪い上昇があります。
良い金利上昇というのは、経済状態が良好で、需要の増加により物価が上昇しており、景気の加熱を抑えるために行う利上げが該当します。
この場合、その国の景気は良好なので、多少の利上げをしても、景気減速は限定的なので、その国で運用したいと考える人が増え、その国の通貨のプラス材料となります。

これに対し、新興国でよく見られる資源価格の上昇や自国通貨安に起因する物価上昇を抑えるための利上げは悪い金利上昇と言われています。
この場合は、景気が良いわけではなく、悪いケースも多いです。
景気が良くない状態で利上げを行うと、景気が後退するリスクが高く、その国で運用したいと考える人は限定的で、むしろ、不安になり、投資資金を引き上げようと考える人も増え、その国通貨のマイナス材料となり、通貨安が進み、負のスパイラルに陥ることもあります。

よって金利が上昇すれば、単純にその国の通貨が買われるというわけではなく、その金利上昇の内容をしっかりと確認する必要があります。

CPIの上昇率が急過ぎないか、政策金利の引き揚げにその国の経済が耐えられそうか(耐えているか)、利上げの効果は出ているか等に注目しながら、その国の金利上昇が良い金利上昇かを考えてみましょう。

  • ・経済が安定しているときは、金利が高い国には投資資金が流入しやすい
  • ・金利の上昇には良い金利上昇と悪い金利上昇がある

【注意点】CPIの発表前後は相場が急変動する可能性がある

前述の通り、各国のCPIは中央銀行の金融政策の判断に大きな影響を与える経済指標であるため、市場の注目度も高く、発表前後に関連する市場が大きく変動することがあります。

また、発表前後は、スプレッドが拡大する傾向にあり、思い通りのトレードができないこともあります。

重要な経済指標の発表前後は、ポジションを無理に持たないなど、十分に注意して下さい。

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5.志摩力男(しまりきお)氏監修、CPIに関する記事一覧

       
記事執筆者:志摩力男(しまりきお)
慶應義塾大学経済学部卒。
ゴールドマン・サックス、ドイツ証券などの大手金融機関でプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任。
その後、香港でマクロヘッジファンドマネージャーを務める。
独立後も世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍中。

以下コンテンツは、現役トレーダーとして活動する志摩力男(しまりきお)氏監修の、CPIに関する記事一覧です。
CPIについてさらに踏み込んだ内容となっているので、より理解を深めたい方はぜひ以下コンテンツをご参考下さい。

CPIのまとめ

最後に、本記事で解説したCPI(消費者物価指数)について簡単にまとめておきます。

  • 1. CPIは、国の物価動向を把握する経済指標
  • 2. 各国の金融政策、為替相場に多大な影響を持つ
  • 3. CPI発表前後は相場が急変動する可能性があるので注意が必要

為替相場に影響する経済指標は、CPIだけではありません。

「雇用統計」や「GDP」など、注目すべき経済指標はたくさんあります。

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