スプレッドとは?仕組みやFX取引に与える影響などを初心者向けに解説
スプレッド(spread)とは、直訳すると「広げる」「広がる」などの意味があり、売値(Bid)と買値(Ask)の差を指します。
FXでは、米ドルや日本円を売ったり買ったりして利益を狙いますが、通貨を売る価格と買う価格では異なる価格が設定されています。
たとえば米ドルを売る価格が100円とすると、買う価格は110円と異なる価格が設定されており、その差額である10円がスプレッドです。
スプレッドは、FXにおいて取引手数料のような役割があり、投資家にとっての取引コストにあたります。
一般的にスプレッドの幅が狭いと、投資家にとって有利な取引が可能と考えられています。
しかしFXで発生する取引コストは、スプレッドだけではありません。
表面的なスプレッドの狭さだけでFX会社を選んでしまうと、思わぬ損失を発生させてしまう可能性があります。
本記事では、スプレッドの仕組みや投資家にどのような影響を与えるのか、取引コストを抑える上で大切なFX会社の選び方などについて詳しく解説します。
目次
- 1.スプレッドとは?
- 2.スプレッドは狭いほうが投資家にとって有利?
- 3.FXで発生する取引コストはスプレッドだけではない?
- 4.スプレッドはなぜFX会社によって異なるのか?
- 5.スプレッドが変動する3つの要因
- 6.スプレッドに関するよくある質問
- 7.まとめ
1.スプレッドとは?
スプレッドとは、売値(Bid)と買値(Ask)の差で、FXにおける取引手数料のようなものです。
未実現損失(まだ実現していない損失)として取引ごとに計上されるので、投資家にとっての取引コストにあたります。
取引手数料を無料としているFX会社は多いですが、実際はスプレッドが実質的な手数料です。
たとえば、米ドルを日本円に両替(米ドルを売って日本円を買う行為)する価格が「133.141」円、日本円を米ドルに両替(米ドルを買って日本円を売る行為)する価格が「133.144」円とします。
133.141(売値)と133.144(買値)の差額である「0.3銭」がスプレッドです。
(スプレッドの単位である「銭」や「pips」については「スプレッドの単位は「銭」と「pips」」で解説)
スプレッドはその言葉の意味から「狭い」や「広い」という言葉で表現され、売値と買値の価格差が小さければ「狭い」、売値と買値の価格差が大きければ「広い」と呼びます。
一般的な考えとしては、スプレッドが狭いと投資家にとって有利な取引を行え、スプレッドが広いと投資家にとっては不利な取引が生じるというものです。
そのため、スプレッドが狭いFX会社を選ぶ投資家が多いのも事実です。
しかしスプレッドが狭いというだけで、FX会社を選ぶのは推奨されません。
もちろんスプレッドが狭いに越したことはありませんが、FX取引で発生するコストはスプレッドだけではないからです。
(FXの取引コストの詳しい詳細については「3.スプレッドは狭いほうが投資家にとって有利?」で解説)
続いて、スプレッドの単位や実際の取引で計上される金額について解説します。
スプレッドの単位は「銭」と「pips」
スプレッドの単位には「銭」と「pips」の2種類があり、日本円を含む通貨ペアは「銭」、日本円を含まない通貨ペアを「pips」と表します。
・銭とは?
銭(せん)とは、日本円の1円未満の金額を表す単位であり、1円=100銭(0.01円=1銭)です。
円絡みの通貨ペアは、「米ドル/日本円(USD/JPY)」「ユーロ/日本円(EUR/JPY)」などがあります。
たとえば米ドル/日本円の売値が100.000円、買値が100.010であれば、スプレッドは1銭(0.01円)です。
・pipsとは?
pips(ピップス)とは、FXで使用される通貨の共通単位のことです。
円が絡まない通貨ペアは、「ユーロ/米ドル(EUR/USD)」や「英ポンド/米ドル(GBP/USD)」などがあります。
たとえばユーロ/米ドルの売値が1.00000ドル、買値が1.00010ドルであれば、スプレッドは1pipsです。
pipsはスプレッドだけではなく、リスク管理や取引戦略などにも影響します。
pipsについて詳しく知らない方は、以下の記事をご参考下さい。
>pipsとは?損益の計算方法やMT4/MT5でpipis表示にする方法
「銭」と「pips」を円換算すると、以下の通りです。
- ● 1pips(1銭)=0.01円0
- ● 10pips(10銭)=0.1円
- ● 100pips(100銭)=1円
またFXは、1,000通貨や10,000通貨などある程度まとまった数量で取引を行います。
以下で、実際の取引ではどのくらいスプレッドが計上されるのかについて解説します。
実際の取引で計上されるスプレッドの金額
まず実際の取引で計上されるスプレッドの金額は、以下の計算方法で算出できます。
- ● スプレッド×取引数量=未実現損失として計上される金額
たとえば、スプレッドが0.1銭、取引数量が1,000通貨と10,000通貨とすると、以下の金額が未実現損失として計上されます。
取引数量が1,000通貨の場合、未実現損失として計上される金額は「1円」、取引数量が10,000通貨の場合は「10円」です。
このように取引数量が変わると、未実現損失として計上される金額も変わります。
スプレッドと取引数量を掛け合わせるだけのシンプルな計算方法のため、簡単に実際の金額が算出できます。
スプレッドの基本を動画で解説
以下動画では、スプレッドについて詳しく解説しています。
動画をクリックすると、スプレッドの解説から始まります。
OANDA証券では、FXの基礎知識に関する様々な動画を提供しています。
ぜひ、以下からご参考下さい。
>FX初心者向けの入門講座動画を視聴する
2.スプレッドは狭いほうが投資家にとって有利?
スプレッドは、FX会社や通貨ペアによって異なります。
一般的には、スプレッドが狭いFX会社で取引をしたほうが、投資家にとって有利な取引ができると考えられています。
では例として米ドル/日本円を取引した際に、スプレッドが変わると取引にどのような影響を与えるのか見ていきましょう。
A社のスプレッドは0.3銭・B社のスプレッドは0.5銭の場合
たとえば米ドル/日本円を取引する場合、以下2社を比較してみましょう。
A社(スプレッドが狭いFX会社)
- ・通貨ペア:米ドル/日本円
- ・売る価格:100.000円
- ・買う価格:100.030円
- ・スプレッド:3銭
- ・取引数量:1,000通貨(1,000ドル)
B社(スプレッドが広いFX会社)
- ・通貨ペア:米ドル/日本円
- ・売る価格:100.000円
- ・買う価格:100.050円
- ・スプレッド:5銭
- ・取引数量:1,000通貨(1,000ドル)
A社の場合、買う価格は100.030円なので、1,000通貨分の米ドルを買うためには100,030円が必要です。
仮にすぐ日本円に戻す場合、売り価格は100.000円なので、1,000通貨分の米ドルを売るのに100,000円が必要です。
為替レートの変動により発生した損益は考慮していないので、この場合はスプレッド分である30円のみが損失として計上されます。
次にB社の場合、買う価格は100.050円なので、1,000通貨分の米ドルを買うためには100,050円が必要です。
仮にすぐ日本円に戻す場合、売り価格は100.000円なので、1,000通貨分の米ドルを売るのに100,000円が必要です。
為替レートの変動により発生した損益は考慮していないので、この場合はスプレッド分である50円のみが損失として計上されます。
このようにA社とB社を比較すると、スプレッドが狭いA社のほうが少ない損失で取引を終えていることが分かります。
スプレッドだけを考えると、スプレッドが狭いFX会社を選んだほうが、取引コストは抑えられると判断できます。
しかし表面的なスプレッドの狭さだけでFX会社を選んでしまうと、思わぬ損失を発生させてしまう可能性もあります。
なぜならば、FXで発生する取引コストは、スプレッドだけではないからです。
以下で詳しく解説します。
3.FXで発生する取引コストはスプレッドだけではない?
FXで発生する取引コストの要因は、主に以下3つあります。
- 1. スプレッド
- 2. 約定力
- 3. スリッページ
スプレッドについては上述したので、約定力から見ていきましょう。
約定力
約定(やくじょう)とは、FX取引が成立することを意味します。
つまり約定力とは、取引が成立する強さを表します。
為替レートは、ミリセカンド単位のスピードで目まぐるしく変動しています。
FXでは、投資家が注文を発注すると、FX会社のサーバに届いてはじめて注文が成立します。
仮に1秒の遅れで約定した場合、数pipsの誤差が発生するのも珍しくはないのが為替相場です。
約定力が弱いFX会社の場合、約定までに時間がかかってしまい、スリッページが発生する恐れがあります。
(スリッページに関しては、以下の「スリッページ」で解説)
結果的に無駄なコストが発生し、思い通りの取引が行えない可能性があります。
約定スピードの重要性については、以下の記事をご参考下さい。
>約定のスピードの重要性
スリッページ
スリッページとは、注文発注から約定するまでに生じる価格のズレです。
たとえばパソコンやスマホなどで取引画面を見ており、米ドル/日本円の価格が110.100円だったとします。
110.100円の時に買い注文を発注すると、投資家の注文はインターネットを通じてFX会社に到達します。
しかし瞬きにも満たないほんの一瞬で為替レートは110.110円に変わって約定しました。
この場合、110.100円で注文したのが110.110円で約定したので、1銭が価格のズレ、つまりスリッページです。
約定力の弱いFX会社の場合、さらにスリッページが発生する恐れがあります。
たとえば、A社のスプレッドが0.3銭、B社のスプレッドが0.2銭とすると、A社のほうが表面的なスプレッドは割高に見えます。
しかし0.2銭のスプレッドを提供していても、0.3銭のスリッページが発生すれば、実際の取引コストは0.5銭です。
スリッページの発生状況は、約定力に大きく影響されます。
つまり取引コストを抑えるなら、スプレッドだけではなく、約定力の強いFX会社を選ぶ必要があるというわけです。
スリッページの詳細については、以下の記事をご参考下さい。
>スリッページとは?
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4.スプレッドはなぜFX会社によって異なるのか?
FX会社によって、スプレッドは異なります。
なぜならば、外国為替市場のレートを元に、FX会社が独自で投資家に提供するスプレッドを決めているからです。
OANDA証券が提示する各通貨ペアのスプレッドは、以下よりご確認下さい。
>スプレッド比較
>取引全コース・オプション比較
また本来ならばスプレッドは市場のレートに合わせて変動するものですが、お客様が安定した取引を行えるよう「原則固定」が主流です。
スプレッドの「原則固定」とは?
原則固定とは外国為替市場のレートに関わらず、公開しているスプレッドで固定するという意味です。
スプレッドが小刻みに変動すると、投資家にとって取引しづらくなってしまいます。
そのため、スプレッドを原則固定としているFX会社は多いです。
しかし、例外もあります。
相場に何らかの事案が発生した場合は、原則固定でも変動する場合があります。
スプレッドが変動する要因を、以下で詳しく解説します。
5.スプレッドが変動する3つの要因
スプレッドが変動する要因は、主に以下3つあります。
- 1. 市場の流動性が低い時間帯
- 2. 重要な経済指標が発表される前後の時間帯
- 3. 突発的な事案が発生した場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【変動要因1】市場の流動性が低い時間帯
市場の流動性(取引量)が低い時間帯は、スプレッドが拡大する傾向にあります。
市場の流動性が低い時間帯は、以下の通りです。
- 1. 日本時間の早朝(5時~8時の時間帯)
- 2. クリスマス
- 3. 年末年始
また市場の流動性が低いと、急な価格変動が発生しやすいリスクもあります。
日本時間の早朝やクリスマス、年末年始といった流動性が低くなりやすい時間帯では、無理に取引を行わないのが賢明です。
【変動要因2】重要な経済指標が発表される前後の時間帯
重要な経済指標が発表される前後の時間帯は、スプレッドが拡大する傾向にあります。
FXの重要な経済指標はいくつかありますが、特に「雇用統計」には注意しましょう。
・雇用統計とは?
雇用統計とは、米国の労働市場を把握する経済指標です。
原則、毎月第1金曜日に米国労働省から発表されます。
雇用統計のデータは主に「非農業部門雇用者数」「失業率」などが有名ですが、これらの他にも労働市場に関する膨大なデータが公開されます。
FX市場にも大きなインパクトを与えるものとして、世界中のトレーダーから注目されている経済指標です。
雇用統計で実際に発表されるデータの見方については、以下の記事を参考にしてください。
>米国雇用統計の見方
また雇用統計の発表後は、トレンド(価格が一方向に動く)が発生する可能性もあります。
安易な気持ちで取引を行えば、大きな損失を発生させてしまうかもしません。
重要な経済指標が発表される前後の時間帯では、取引を控えたほうが良いでしょう。
FX市場に大きなインパクトを与える経済指標は、雇用統計以外にも「消費者物価指数(CPI)」や「GDP」などがあります。 これらの経済指標がいつ発表されるのかは、必ず抑えておきましょう。
各経済指標の発表日は、以下の記事から確認できます。
>経済指標カレンダー
【変動要因3】突発的な事案が発生した場合
突発的な事案が発生した場合は、スプレッドが拡大する傾向にあります。
突発的な事案とは、金融危機や災害、テロなど全世界に影響を与えるものです。
たとえば2020年に発生した新型コロナウイルスによる「コロナショック」では、世界中がパニックに陥りました。
FX市場も同様にパニックとなり、原則固定スプレッドを一時停止するFX会社もあったほどです。
突発的な事案はいつ発生するかは誰にも予測できないので、防ぎようがありません。
しかし日々リスクを抑えた取引を行うことで、仮に突発的な事案が発生しても損失を最小限に抑えられるでしょう。
6.スプレッドに関するよくある質問
- スプレッドが計上されるタイミングはいつ?
スプレッドが未実現損失として計上されるタイミングは、注文を発注して約定した後です。
以下動画を、ご覧下さい。注文の発注後、スプレッドが未実現損失として計上されていることが分かります。
FXでは、スプレッドがあるので、マイナス収支からのスタートです。
そのため、スプレッド分を超える値幅を取得しなければ、利益を得ることは出来ません。- スプレッド負けとは何ですか?
取引で得た利益よりも、スプレッドによって発生する損失のほうが多いことを「スプレッド負け(手数料負け)」と呼びます。
スプレッド負けは、取引スキルの無い初心者がやりがちな「ポジポジ病(むやみやたらに取引を行うこと)」や「高いレバレッジでのスキャルピング」などの取引を行う方に多く見られる傾向があります。
OANDA証券が提供する「勝ちトレーダーと負けトレーダーの特徴」では、成績が良いトレーダーは成績が悪いトレーダーに比べて、トレード回数が少ないという結果があります。
以下の記事から、スプレッド負けを起こさないためにどういったトレードを行えば良いか、是非参考にして下さい。
>先月の上位、下位200口座のトレード分析【2023年5月26日】- スプレッドと手数料の違いは何ですか?
スプレッドは、上記で解説した通り、売値と買値の差です。
一方手数料は、口座維持費や入出金手数料などがあります。スプレッドと手数料は、厳密には違います。
とは言え、取引する度に計上されるので、取引手数料のようなものと考えておくと良いでしょう。- スプレッドは決済時にも引かれるのですか?
スプレッドは注文が約定した後、未実現損失として計上されます。
決済時に実際の損失分として計上されるので、1回の取引につき1回しかスプレッドは計上されません。
7.まとめ
最後に、本記事で解説したスプレッドについてまとめます。
- 1. スプレッドとは、売値と買値の差であり、取引手数料のようなもの
- 2. スプレッドは狭いに越したことはないが、表面的なスプレッドの狭さだけでFX会社を選ぶのは推奨されない
- 3. FXの取引コストを抑えるなら、スプレッド・約定力・スリッページの3つに注目する
なお、OANDA証券では、これからFXを始める初心者の方に向けて、FXを学ぶための記事や動画といったコンテンツを豊富に提供しています。
これらのコンテンツも、ぜひご参考下さい。
FX初心者にオススメのコンテンツ

これからFXを始める初心者の方向けに、豊富なコンテンツを提供しています。コンテンツを読み進めていくことで、初心者の方でもFXをスムーズに始めることが可能です。またOANDAの口座保有者だけが使えるOANDAオリジナルインジケーターも提供しています。是非OANDAの口座開設をご検討ください。
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OANDA Lab編集部
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