FXに関するコラム・豆知識

米国株式市場は底堅く、史上最高値を更新 今週は米国消費者物価指数、パウエルFRB議長の議会証言等に注目 OANDAラボ-マーケット最新情報(2021年7月12日)


リスク回避も長続きせず、米国株式市場が底堅い動き


先週のマーケットは米国の非製造業景況指数が冴えない結果となったことを受けて米国の景気回復のピークアウトの可能性が意識されたことや米中関係悪化懸念、新型コロナの感染再拡大の報道等の影響で、週の中盤には株式市場が大幅下落、債券市場では米国債利回りが低下、FX市場では資源国や新興国の通貨が売られ、米ドル、円、スイスフランが買われるなどリスク回避色の強い相場となりました。

しかし、リスク回避の動きは長続きせず、週末には、巻き戻しの動きが強まり、ダウ工業株30種平均やS&P500、ナスダック総合指数など主要な株価指数が史上最高値を更新、米国債利回りは下げ止まり、FX市場では、米ドル、円が売られ、資源国通貨、新興国通貨等が買い戻される展開となりました。

【ドルインデックス、S&P500、米国債利回り(10年、2年)、金の推移】

上からドルインデックス、S&P500、米国10年債利回り、米国2年債利回り、金の推移

 

【残存期限別の米国債利回りの推移】

週末は少し反発するも、長期債利回りを中心に緩やかな低下傾向が続いています。

出所:U.S. DEPARTMENT OF THE TREASURY

米国債、日本国債利回りの推移はこちら

 

【直近5週間の金曜日の米国債イールドカーブの比較】

先週末は過去数週間に比べ全体的に低い水準となりました。

 

【米国債イールドカーブの変化(3Dグラフ)】

出所:U.S. DEPARTMENT OF THE TREASURY

米国債、日本国債のイールドカーブの推移はこちら

 

ECBは物価目標を2%に変更


先週はECBが物価目標をこれまでの2%未満でその付近(below but close to 2%)という表現から2%へと変更しました。

これまでの表現は2%よりも下ということが強調され、2%を超えることを阻止するような内容でしたが、2%とすることで2%を一時的に超えることを容認するような表現となりました。

変更の内容自体は、2%を一時的に上回っても金融引締めを行わないというハト派的な変更なので、ユーロにとっては売り材料と考えられますが、発表後はユーロは比較的堅調な推移となりました。


米国消費者物価指数、パウエルFRB議長の議会証言等に注目


今週は米国で消費者物価指数の発表、パウエルFRB議長の議会証言に注目が集まりそうです。

消費者物価指数は米国の金融政策を占う上で重要な経済指標の一つです。市場予想を上回る結果となるとFRBの金融緩和縮小が意識され、株式市場の上値圧迫材料、米国債利回り上昇、米ドルの下支え材料となりそうです。

パウエルFRB議長の議会証言も市場を大きく動かす要因となりそうです。引き続きハト派的な内容となるかに注目が集まり、今後の金融政策の手がかりとなるような材料が出てくると市場が過敏に反応する可能性があるため、注意が必要です。

米国では他にも、鉱工業生産、小売売上のほか、雇用統計の先行指標となる新規失業保険申請件数などの経済指標の発表に注目が集まりそうです。

欧州でもユーロ圏や英国で消費者物価指数の発表が予定されています。それぞれECB、BOEの金融政策を占う上で重要な経済指標となるため、注目したい経済指標です。

日本では日銀の金融政策決定会合が予定されています。金融政策については現状維持との予想が中心となり、無風通過となりそうですが、展望レポートの内容や黒田総裁の記者会見の内容等に市場が過敏に反応する可能性があるため、注意が必要です。

このほか、中国のGDP、オーストラリアの雇用統計等にも注目です。

【米国の消費者物価指数(前年比)の推移】

【主要国の消費者物価指数(前年比)の比較】

主要な経済指標・中央銀行のイベントの予定はこちら

過去の経済指標の推移はこちら


主要通貨の強弱


先週は週の中盤にリスク回避色が強まり、円、米ドル、スイスフランが強い推移となりました。週末には少し巻き戻しの動きとなりましたが、週間を通しては円、スイスフランが強い動きとなりました。

これに対し、カナダドル、豪ドル、NZドルといった資源国通貨は上値の重い推移となりました。週末には多少買い戻しが入ったものの、下落分を全て取り戻すことはできませんでした。

【先週の主要8通貨の通貨別の騰落率】

最新の通貨別強弱(騰落率)グラフはこちら

直近30日間の主要通貨の通貨の強弱チャートを見ると、米ドル、円が強いのに対し、豪ドルやカナダドルが弱い動きとなっています。

【直近30日間の主要8通貨の通貨の強弱チャート】

最新の主要通貨の強弱チャートはこちら


直近30日間の株価指数の変化率


米国市場

米国の株価指数CFDは高値圏での推移が続いています。週の中盤には下押しが強まる場面もありましたが、週末には反発し、US500が史上最高値を更新となりました。これに対し、US2000は伸び悩んでいます。

最新の主要の株価指数の変化率はここでチェック

欧州市場

欧州の株価指数CFDは前半は上値の重い推移となりましたが、週末は反発に転じる動きとなりました。

最新の主要の株価指数の変化率はここでチェック

アジア・オセアニア市場

先週のアジア・オセアニアの株価指数CFDは横ばいのものもありますが、CHINA50、HK50は上値の重い推移となっています。また、JP225は上値の重い推移が続きましたが週末には反発する動きとなりました。

 

主要銘柄の相関性分析


先週のドルストレートの通貨ペアは円が強い動きとなったこともあり、円がユーロとスイスフラン以外の通貨と対ドルでは逆の動き。また、ユーロやスイスフランも他のドルストレートとの相関性が普段よりも少し薄い動きとなりました。

【先週の主要ドルストレート通貨ペアの相関性】

先週は週中盤にリスク回避色が強まり、週末にかけてはその巻き戻しの動きとなり、円の強弱がはっきりとしたため、ほとんどのクロス円が近い動きとなりました。ただし、スイスフランも円と近い動きをしていたこともあり、CHF/JPYはUSD/JPY、その他のクロス円との相関性が低い動きとなりました。

【先週のドル円、クロス円の相関性】

先週の主要通貨と米国株価指数(ここでは代表的なUS500との相関性を表示しています)の相関性を見ると、US500とドルストレートの通貨ペアは、EUR/USD以外のドルストレートとの相関性が比較的高かったほか、US500とクロス円の銘柄ではポンド円を中心に相関性が高い動きとなりました。

【先週の主要銘柄と米国株価指数の相関性】

最新の相関性のチェックはこちら


OANDA、先物市場のポジション、主要銘柄の値動き


FX

米ドル/円(USD/JPY)

先週のドル円は上値が重く、一時109円台中盤まで下押しする動きとなった後、少し反発し110円台を回復して週末を迎えました。

OANDAのオープンポジションを見ると、買いポジションの比率が少し高いですが、直近の反発により含み損を抱えた売りポジションが増えており、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。 一方で先週の下押しにより含み損を抱えた買いポジションが比較的多く残っており、反発した水準では安堵の利益確定売りが増え、上値が圧迫される可能性にも少し注意が必要となり、悩ましい状態です。

4時間足チャートを見ると、上昇基調が続いていましたが、安値を結んだラインや直近の安値を割り込む動きとなっており、流れが変わり始めているように見えます。

まずは反発がどの程度になるか、下値を探る動きとなった場合は直近のサポート水準となる109.50付近を守れるか等に注目しながら、根気強く方向感を探っていきたいところです。

【USD/JPYの4時間足チャート】

表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足

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投機筋の円の通貨先物市場のポジション比率は前週から横ばいとなり、円売りポジションに傾く状況が続いています。

【投機筋の通貨先物市場の円のポジションの推移(最終更新日2021/7/6)】

シカゴIMM通貨先物ポジションのチェックはこちら

ユーロ/米ドル(EUR/USD)

先週のユーロドルは1.18を割り込む水準まで下押しする動きとなりましたが、週末にかけては反発に転じ、1.18台後半まで上昇し週末を迎えています。

4時間足チャートを見ると安値を切り下げる動きが続いていましたが、直近では高値を結んだラインを上抜けるような動きとなっており、流れが変わる可能性も少し考えられそうです。

OANDAのオープンポジションを見ると、売買の偏りは少ない中、直近の反発により含み損を抱えた売りポジションが増えており、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性に注意が必要となりそうです。

【EUR/USDの4時間足チャート】

表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足

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投機筋のユーロの通貨先物市場のポジションは依然としてユーロ買い比率が高い状態ではあるものの、買いポジション比率の減少傾向が続いており、今週もこの傾向が続くかを見守りたいところです。

【投機筋の通貨先物市場のユーロのポジションの推移(最終更新日2021/7/6)】

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ポンド/米ドル(GBP/USD)

先週のポンドドルは1.373-1.39付近のレンジで上下に振れる動きが続きました。

4時間足チャートを見ると、下落基調が続いていましたが、直近では安値を切り下げることができずに反発に転じており、流れが変わる可能性に少し注意が必要となりそうです。

OANDAのオープンポジションを見ても、売買のポジションの偏りは少ない中、直近の反発により、含み損を抱えた売りポジションが増えており、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、これらのポジションの損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。

今週はまず直近の高値水準の1.39をしっかりと上抜けることができるか、下押しの際は直近のサポート水準を守れるか等に注目しながら、底堅い推移が続くかを見守りたいところです。

【GBP/USDの4時間足チャート】

表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足

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投機筋のポンドの通貨先物市場のポジションは買いポジション比率の減少傾向が続いていましたが、直近では買いポジション比率が増加に転じており、今週も続くかを見守りたいです。

【投機筋の通貨先物市場のポンドのポジションの推移(最終更新日2021/7/6)】

シカゴIMM通貨先物ポジションのチェックはこちら

豪ドル/米ドル(AUD/USD)

先週の豪ドルは上値が重く、0.741付近まで下押しとなりましたが、週末には0.75に迫る水準まで反発する動きとなりました。

OANDAのオープンポジションを見ると、売買の傾きは少ない中、下落基調が続いたことにより、含み損を抱えた買いポジションが多い状況ですが、直近の反発により苦しくなった売りポジションも少し目立つ状況です。

4時間足チャートを見ると下落基調が続いており、今後も上値の重い推移が続く可能性も考えられる一方で、下押した水準では含み損を抱えた売りポジションの買い戻し、高値を切り上げる動きとなると損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性にも少し注意が必要となりそうです。

また、日足チャートのRSIもダイバージェンス気味の動きとなっており、下落の勢いが和らいでいることを示しており、流れが変わる可能性に注意が必要な状況と考えられそうです。

【AUD/USDの4時間足チャート】

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投機筋の豪ドルの通貨先物市場のポジションは、徐々に売りポジションへの傾きが大きくなっており、今後の変化に注目したいです。

【投機筋の通貨先物市場の豪ドルのポジションの推移(最終更新日2021/7/6)】

投機筋の通貨先物ポジションのチェックはこちら

CFD

米国S&P株価指数500(US500)

先週のUS500は一時4290付近まで下押しする動きとなったものの、週末にかけては反発に転じ、高値を更新する動きとなりました。

OANDAのオープンポジションを見ると、売りポジションに大きく傾く中、高値圏での推移が続いており、そのほとんどが含み損を抱えている状況です。

このため、下押した水準では、これらのポジションの安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、これらのポジションの損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。

【US500の4時間足チャート】

表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足

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投機筋のS&P500先物のオープンポジションを見ると、買いポジション比率が少し多い状況が続くなか、先週も微増となりました。今週もこの傾向が続くかを見守りたいところです。

 

【投機筋の先物市場のS&P500 consolidatedのポジションの推移(最終更新日2021/7/6)】

投機筋の株価指数先物市場のポジションのチェックはこちら

 
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