テクニカル分析解説

プライスアクションの基本は日足である理由を日銀の相場介入を事例に解説


プライスアクションは、短いスパン(日足以下)でも通用しますが、基本はやはり日足です。
なにしろ、株も為替も、終値をもって相場におけるロング勢とショート勢の攻防が繰り広げられ、決着あるいは妥協を図るため、日足におけるプライスアクションの視点はもっとも重要なのです。

為替相場は24時間絶えず変動していますが、それでもNY市場クローズの時刻が意識され、インターバンクに参加するトレーダーはそこでポジションを決済するか、ロールオーバーするかを決定することが多いです。
そのため、日足の終値は重要な意味合いを持ちます。
プライスアクションにおけるサインは、終値があるからこそ、一層示唆に富むわけです。

24時間絶えず変動している為替相場
ドル/円 日足

最近の好例として、2022年9月~10月における日銀の相場介入があった日が挙げられます。
過度な円安進行を阻止すべく、日銀は2022年9月22日にドル/円相場に介入(ドル売り/円買い)し、当日大陰線を形成しました(チャートの①)。

大陰線の特徴としてまず挙げられるのは、値幅が大きかったこと、次に高値も安値も罫線の「実体部分」から離れていたことです。
このプライスアクションにはすべて意味があり、重要なサインとされますが、終値の存在なしでは比較できません。
また終値自体の重要性が低くなると、プライスアクションのサインも弱いとみられます。

当日は日銀が為替介入したがため、終値の意味合いが一層大きくなりました。
なにしろ、介入はサプライズであり、あまり見られない中央銀行の直接取引ですから、市場参加者に多大なインパクトを与えたに違いありません。
いろいろな思惑が噴出する中、ロング勢のストップが刈られたり、ショート勢が便乗して参入したりして、ロング勢とショート勢の戦いが熾烈を極めたと推測できますが、最後はどこかで「決着」を決めなければなりません。
その時刻はほかならぬ、NYクローズの時間であり、そこで終値が形成されたからこそ、大きな意味合いがあるわけです。

詳細はこれから一緒に勉強していきますが、当日値幅が大きかったこと、そして高値も安値も「実体部分」から離れたことは、ロング勢とショート勢が激しく戦った結果であり、また象徴であることも覚えておきましょう。
当日の終値は142.35円でしたが、翌日(9月23日)の安値が141.76円に留まり、143.48円で大引けしたことで最初の示しを付けたと思われます。
その後もじわじわと上値をトライし、10月12日には9月22日高値の145.91円を突破しました。

チャートをさかのぼって見ると、9月22日の大陰線は、9月7日から形成してきたすべての日足の値幅よりも大きいです(プライスアクションではアウトサイドと言います)。
また、それ以降を見ると10月11日までのすべての日足の値幅よりも大きかったことが分かります(プライスアクションではインサイドと言います)。
このように大陰線の前後の関係を確認した上で、10月12日の高値更新が重要なサインであったと悟らないといけません。

為替介入当日にロング勢とショート勢が激しく戦い、市場関係者が各自の思惑と判断で行動した結果、下値突破ではなく上値突破となり、日銀最初の介入が失敗だったことがはっきり示唆されました。
上値突破はロング勢の勝利を示唆するサインと化し、また同サインを見てから、ショート筋の損切りや新たなロング筋の参入が推測され、10月高値の151.96円(チャートの②)につながったわけです。

実際、9月22日の値幅は556pips(高値から安値を引いた値幅)で、「倍返し」(同値幅を同日高値に加える)の計算では151.47円となり、10月高値の蓋然性を暗示しました。
プライスアクションの基本は日足にある、と証左する好例です。
また、なぜ2回目の介入が成功したかについても、プライスアクションの視点では合理的な解釈ができます。
これからの解説にご期待ください。

Provided by
陳 満咲杜(まさと)

中国・上海生まれ。
1992年来日、日本語学校を経て日本大学経済学部に入学。
生活費と学費をアルバイトでまかないながら在学中より株式投資を開始。
大学卒業後、中国情報専門紙の株式担当記者を経て黎明期(1999年)のFX業界へ。
香港や米国の金融機関で実務を重ね、トレーダーとしての経験を積む。
GCAエフエックスバンク マネージングディレクター、イーストヒルジャパン チーフアナリストを経て独立。
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

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