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米国の中央銀行(FED・FRB)の仕組み|連邦準備銀行とは


米国の中央銀行であるFederal Reserve System(連邦準備制度・FED・FRS)は、「雇用の最大化」と「物価の安定」のために金融政策を行います。

そのFEDの最高意思決定機関であるFederal Reserve Board(連邦準備制度理事会・FRB)は、全米12地区の地区連銀を監督し、年8回のFOMCで金融政策を決定する役割を担います。

FOMCで発表される経済見通しや政策金利は、世界から注目され相場に大きな影響を及ぼすので、重要なイベントの1つとして数えられます。

本記事では、FEDやFRBの役割、FOMCが相場へどのような影響を与えているのかを詳しく解説します。

米国の中央銀行(FED・FRB)とは?

米国の中央銀行というと本来、Federal Reserve System(連邦準備制度・FED・FRS)を指します。その中心的な機関が、Federal Reserve Board(連邦準備制度理事会・FRB)です。

報道などで用いられる場合、FRBを中央銀行として指しているケースも多いため、言葉の意味を柔軟に捉える必要があります。

FRBはFEDの最高意思決定機関であり、金融政策の実施等を行うほか、全米12地区の地区連銀を統括しています。

また、FRBのメンバーと地区連銀総裁が集まり行われる年8回のFOMC(連邦公開市場委員会、Federal Open Market Committee)という会議で、金融政策を決定しています。

米国の中央銀行制度のイメージは、下図の通りです。

米国の中央銀行制度のイメージ

FED(連邦準備制度)とは

FED(Federal Reserve System)は、米国の連邦準備制度のことを指します。

連邦準備「銀行」ではなく、連邦準備「制度」であるのは、複数の組織から成り立っているからです。

米国が建国以来、分権主義を標榜し、中央集権的な組織に対して抵抗感があったため、地方分権主義の名残が残っています。

その制度の中でも、金融政策の基本方針決定に中心的な役割を果たす組織が、FRB(連邦準備制度理事会)です。

FRBの主たる任務は、下記の3つです。

  • ①公開市場操作の基本方針決定に参加すること
  • ②公定歩合変更を決定すること
  • ③公定歩合変更を決定すること

FRB(連邦準備制度理事会)とは

FRBとは「Federal Reserve Board」の略で、米国の金融政策を策定する連邦準備制度理事会のことです。

日本における日本銀行と同じで、金融機関の監督機能も担っています。

FRBは7名の理事から構成されます。その理事の中から1名のFRB議長、2名(金融政策担当、銀行監督担当)のFRB副議長が任命されます(下図参照)。

FRBメンバー

理事の任期は14年で、議長、副議長の任期は4年です。

いずれも大統領により指名された後、上院で承認され、正式に就任します。

RBメンバーの交代、特に議長が交代となる場合は、次の人選に関する報道で FX市場が過敏に反応することがあります。

FRB(連邦準備銀行)とは

先に連邦準備制度理事会をFRBとして解説しましたが、連邦準備銀行(Federal Reserve Bank)を指す場合もあります。

連邦準備制度理事会の監督のもと、全米12の地区ごと置かれる連邦準備銀行(地区連銀)は、形式的には独立した株式会社です。

地区連銀の構成には、米国の地方分権主義の流れが色濃く残っています。

民間の銀行は、所轄の地区連銀に準備預金を積み立てる義務と、そこから借り入れを受ける特権を有していることから、全ての民間銀行は実質的に地区連銀の管轄下にあります。

公定歩合の変更は、各地区の連邦準備銀行が個別に理事会に申請する形をとっています。

また、地区連銀の総裁は地区の代表としてFOMCに出席することになっています。

FOMC(連邦公開市場委員会)・FOMCのメンバー

連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee)、略してFOMCは日銀の政策委員会に相当する最高意思決定機関です。

FOMCは年に8回、約6週間ごとにワシントンの理事会会議室で開催されます(※ただし、新型コロナウイルス感染拡大時のロックダウンなど、緊急時には電話会議が行われます)。

金融調節の代表的手段である公開市場操作の基本方針は、FOMCで決定されます。

FOMCで投票権を有する参加者は、下記の12名です。

  • ・FRB理事(7名)
  • ・地区連銀から総裁5名(1名はニューヨーク連銀総裁が常任、4名はその他11地区の連銀総裁が1年交代の輪番で務めます)

その他の地区連銀総裁7名は、投票権のないオブザーバーとして出席します。

現在のFOMC参加メンバーは、こちらの記事で紹介しているので、詳しく知りたい人は、この記事と一緒に読んでみましょう。

金融政策の決定方法

FOMCの議長はFRB議長が務め、副議長はニューヨーク連銀総裁が務めます。

議決は、投票権を有する参加者の計12名の単純多数決で決定されます。

決定した公開市場操作の基本方針は、実際の執行機関であるニューヨーク連銀に向けて指令されます。

FOMCの開催予定

米国の金融政策は、年8回のFOMCにて決定されます。

会合は2日間開催され、2日目の会合終了後には、現地時間の午後2時に声明文が公開、その30分後に記者会見が行われます。

また、経済見通しの発表は声明文と併せて公表され、議事録は約3週間後に公表されます。

FOMC開催日程イメージ

※FOMC開催日程イメージ

正確なスケジュールはFRBのウェブサイトで確認できます。

FRBが相場に与える影響とは

FRBは、FF金利(フェデラル・ファンド金利)を、公開市場操作を通じて政策金利に誘導します。

FF金利とは、米国の民間銀行が連邦準備銀行に預けている準備預金を、他の民間銀行に貸し付ける際の短期金利のことです。

誘導目標である政策金利はFOMCで決定されることから、短期金利は中央銀行の金融政策によってほぼ決定されるといえます。

金利の引き上げ・引き下げ

FRBは、金利の引き上げや引き下げで、経済や物価、雇用などを調整します。

経済成長のスピードが速すぎれば金利を引き上げ、経済成長に陰りが見えたり、景気後退に陥ったりすれば金利を引き下げます。これにより「雇用の最大化」と「物価の安定」を促進することを目指しています。

金利を引き上げると、銀行の貸出金利が上昇することで消費が抑えられ、経済成長が抑制されます。金利上昇により企業の借り入れコストが増加し、株価の上昇を抑えられます。

一方、金利が上昇することで米ドルが買われやすくなります。

逆に金利を引き下げると、銀行の貸出金利が低下することで消費が促され、企業の借り入れコストが低下し株価は上昇します。

一方、金利が低下することで、米ドルが売られやすくなります。

QE(量的緩和)

量的緩和(Quantitative Easing)とは、マネタリーベース(市場に供給されるお金)の「量」を操作目標として、市場に大量の資金を供給する金融緩和政策のことです。

QEの目的は、長期金利を引き下げることです。低金利による経済の活性化、株価や住宅といった資産価格の上昇を狙います。

FEDが債券を買い入れることで、長期金利を引き下げます。これにより市場の総資産が増加するため、相対的に米ドルの価値が下がり売られやすくなります。

米国の中央銀行(FED・FRB)に関するQ&A

ここでは米国の中央銀行に関して、よくある疑問点に回答します。

  • ・デュアルマンデートとは?
  • ・FOMCは日本でいうと何ですか?
  • ・連邦準備制度と日本銀行の違いは何ですか?

デュアルマンデートとは?

デュアルマンデートとは、FRB・FOMCに対して掲げられている法的使命のことです。

FOMCの声明文には、次の一文が入ります。

「Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. (その法的任務に従い、委員会は「雇用の最大化」と「物価の安定」を促進することを目指します)」

FEDは、この文言からも分かる通り、金融政策を行うにあたって「雇用の最大化」と「物価の安定」という2つの責務を負っています。

FOMCは日本でいうと何ですか?

米国の連邦公開市場委員会(FOMC)は、日本でいうと日銀金融政策決定会合にあたります。

いずれも金融政策を決定する会合のことを指します。

連邦準備制度と日本銀行の違いは何ですか?

連邦準備制度(FED・FRS)は、連邦制を採用する米国特有の中央銀行制度です。

12の地区連銀が、日本銀行のような中央銀行としての役割を担っており、それらを統括する組織としてFRBがあります。

また、FEDと日本銀行では責務に違いがあります。

FEDの場合は金融政策を行うにあたり、「雇用の最大化」と「物価の安定」という2つの責務を負う「デュアルマンデート」を採用していますが、日本銀行は「物価の安定」という責務を負う「シングルマンデート」を採用しています。

【まとめ】米国の中央銀行(FED・FRB)の仕組み|連邦準備銀行とは

米国の中央銀行にあたる連邦準備制度(FED)は、金融政策の基本方針決定に中心的役割を果たす組織である連邦準備制度理事会(FRB)と、全米12の地区ごとに置かれている連邦準備銀行(同じくFRB)、最高意思決定機関である連邦公開市場委員会(FOMC)など複数の組織から成り立つ制度です。

中心的な役割を果たすFRBは、議長と副議長を含めた7名の理事で構成されています。

最高意思決定機関であるFOMCは、理事会から理事全員(7名)、地区連銀から総裁5名(1名はニューヨーク連銀総裁が常任、4名はその他11地区の連銀総裁が1年交代の輪番で務める)の計12名の単純多数決で、金融政策を決定します。


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