用語解説

FX取引の損切りとは|設定目安・ルールの決め方を解説


FX取引で安定して成果を出し続ける上で、基本の1つになるのが「損切り」です。

全ての取引でプラス収益を上げることは難しく、一部のトレードでは損失が生じます。

その損失は、自ら定めたルールによってコントロールすることが推奨されます。

しかし、現実に損切りが必要な場面になると、躊躇してしまう人も少なくありません。

必要な場面で損切りを迷わずに実行するためには、損切りの目安やルールを用意しておく必要があります。

本記事では、損切りの目安やルールの決め方、MT4・MT5などのツール上での設定の方法を説明します。

FX取引における損切りとは

FX取引における損切りについて、以下の項目を解説していきます。

  • ・意味
  • ・損切りをしなかった場合

意味

損切り

損切りとは、損失を確定する行為のことであり、別名「ストップロス」とも呼びます。

特に、FX初心者のうちは損失の確定を恐れるあまり、この損切りを実践できないケースが多く見られます。

しかし、損失を確定しないことの方がリスクは高く、損切りをためらったために大きな損失を出してしまうケースは、よく見られる失敗パターンの1つです。

FX取引は、プロのトレーダーでも一定の損失を出すものであり、勝率100%の手法やスタイルはありません。

安定して成果を出し続けるためには、利益を得るだけでなく、損失を小さく抑える(上手に負ける)ことも重要です。

この点も含め、FX初心者が失敗しやすい事例については、こちらのコンテンツで詳しく解説しています。

損切りをしなかった場合

損失が出ている状況で、損切りをしなかった場合の結果は2通りです。

損切りをしなかった場合

1つ目の結果としては、損益分岐点まで価格が戻り、損失が解消される。

2つ目の結果は、そのまま強制ロスカットまで損失が拡大することです。

強制ロスカットとは、証拠金不足となり強制的にポジションが決済されることです。

強制ロスカットが実施された場合は、一定の証拠金しか残りません。

気をつけたいのは、急な値動きが発生した場合で、証拠金が残らず追証(追加証拠金)が発生する可能性もあることです。

損切りをしなければ、損失が発生しない可能性もありますが、強制ロスカットにより資金を全て失うリスクが残ります。

このことから一般的に「損切り」の設定が推奨されています。

FX取引の損切り目安・ルールの決め方

FX取引の損切り目安や、ルールの決め方は以下の通りです。

  • ・損失額で決める
  • ・損失率で決める
  • ・値幅(pips)で決める
  • ・テクニカル分析で決める

損失額で決める

損失額で決めるルールは「1回の取引で○○円の損失が出たら損切り」というものです。

下図の場合「1000円」というルールで損切りしています。

損失額で決める

設定した金額で損切りできるのがメリットです。

ただし、取引数量が大きければ、相場のわずかな変動でも損切りになってしまうことがあるため注意が必要です。

損失率で決める

固定の損失額ではなく「損失率」で決める方法もあります。

1回の取引で、資産比あるいはポジション比○○%の損失が出たら損切り」というルールです。

このルールの場合、資産またはポジションの大きさに対する比率で損切りができます。

その比率での損切りがいくらになるかを、しっかりと把握しておく必要があります。

値幅(pips)で決める

値幅(pips)で決める方法は「○○pips変動したら損切り」というルールです。

例えば、下図では「10pips」の下落で損切りをしています。

値幅(pips)で決める損切り
出典:TradingView

①の時点では148.30円だった相場が、②の時点では148.20円と「0.10円(10pips)」下がったところで損切りです。

このようにpipsで損切りを設定する場合、取引数量によって損失額が変動することに注意が必要です。

取引数量が大きければ、損失額も比例して大きくなります。

損切りになった場合にはいくらの損失になるのかを、確認しておく必要があります。

テクニカル分析で決める

テクニカル分析によって、損切りの水準を決める方法もあります。

ここでは移動平均線を用いる方法を紹介します。

テクニカル分析で決める損切り
出典:TradingView

チャート内の緑の線が「移動平均線」です。

価格がこの線よりも上にある①で買いを入れています。

その後しばらくは含み益が出たものの、下落に転じて下げ足が速まりました。

そして、②で移動平均線を下回ったため損切りしています。

移動平均線は、計算対象期間の「平均取得価格」を表す線です。

この線をローソク足が下抜けたということは、該当期間にその通貨ペアを買った人の平均損益が「プラスからマイナスに転じた」ことを意味します。

ローソク足が移動平均線を下抜けるポイントが、買いポジションの損切り目安の1つとして用いられることがあります。

上記は移動平均線1本(長期)のみを使ったシンプルな分析ですが、その他のテクニカル指標も損切りの判断基準として役立ちます。

例えば、下図の「デッドクロス」もその1つです(赤ライン:25日移動平均線、緑ライン:75日移動平均線)。

デッドクロス
出典:TradingView

デッドクロスは「短期の移動平均線が中長期の移動平均線を、上から下に抜ける形で交差する動き」のことです。

一般的に、デッドクロスが発生すると相場が下落する傾向が見られるため、買いポジションを保有していた場合には、損切りの目安となります。

FX取引で損切りができる注文方法の例

FX取引で損切りができる注文方法の例は、以下の通りです。

  • ・逆指値注文
  • ・OCO注文
  • ・IFD注文
  • ・トレーリングストップ注文

逆指値注文

逆指値注文は「この価格まで変動したら自動で決済する」という設定を、事前に行うものです。

逆指値注文による損切り

損切りの逆指値注文を一度設定したら、解除するか期限切れにならない限り、損切りが実行されます。

このため「自分の意思で損切りするのが難しい」「相場に張り付くのが難しい」という場合に適した注文方法です。

逆指値注文」の記事で詳しく解説しています。

OCO注文

OCO注文とは、指値注文と逆指値注文を同時に出し、片方が成立したらもう片方の注文がキャンセルされる注文方法です。

OCO注文を決済注文で用いる場合、片方は利益確定、片方は損切りの注文を出します。

OCO注文による損切り

このように両方の注文を出すことで、損切りの備えをしつつ、利益確定への備えもできます。

OCO注文」の記事で詳しく解説しています。

IFD注文

IFD注文とは、新規注文と決済注文を同時に出す注文方法のことです。

以下の図をご覧ください。

IFD注文による損切り

②の決済注文を、①の新規注文より不利な価格にすれば、損切りの設定を行えます。

IFD注文」の記事で詳しく解説しています。

トレーリングストップ注文

トレーリングストップ注文とは、相場の動きに合わせて逆指値の価格が自動修正される注文方法です。

仕組みについては、下図をご覧ください。

トレーリングストップ注文

ロング(買いポジション)の場合、①のように買い注文を入れたら、②のように逆指値注文を出します。

そして、③のように現在の価格が上がると、④のように逆指値注文の価格(トレール価格)も上がります。

このように、相場の動きにトレーリング(追従)するストップ注文(逆指値注文)という意味で「トレーリングストップ注文」と呼ばれます。

価格の上昇とともにトレール価格も切り上げることで、損切り幅を一定に保ちながら利益を追求できるのが特徴です。

トレーリングストップ注文は⑤のように、価格が下落してもトレール価格が下がることはありません。

⑥のように、トレール価格まで下がったら、その時点で決済されます。

トレーリングストップ注文」の記事で詳しく解説しています。

FX取引で損切りを設定する方法

OANDA証券では、「MT4」「MT5」「fxTrade」といった取引プラットフォームを提供しています。

「MT4」「MT5」「fxTrade」で逆指値注文(ストップ注文)を設定する方法について、実際の画像を用いて解説します。

  • ・MT4(メタトレーダー4)の場合
  • ・MT5(メタトレーダー5)の場合
  • ・「fxTrade」の場合

MT4(メタトレーダー4)の場合

MT4(メタトレーダー4)で逆指値注文を設定する方法について解説します。

  • ・STEP1:「新規注文」を選択してポジションを保有する
  • ・STEP2:ポジション情報の上で右クリックをして「注文変更または取消」を選択
  • ・STEP3:「決済逆指値(S/L)」に、損切りする価格を設定
  • ・STEP4:注文の変更ボタンを選択して完了

MT4(メタトレーダー4)の使い方」の記事で詳しく解説しています。

MT4
出典:MT4

また、チャート上に表示される保有ポジションのラインをクリックしながらドラッグすることで、逆指値注文を設定することも可能です。

MT4
出典:MT4

MT5(メタトレーダー5)の場合

MT5(メタトレーダー5)で逆指値注文を設定する方法について解説します。

  • ・STEP1:「新規注文」を選択してポジションを保有する
  • ・STEP2:ポジション情報の上で右クリックをして「注文変更または取消」を選択
  • ・STEP3:「Stop Loss」に、損切りする価格か損切り幅を設定
  • ・STEP4:注文の変更ボタンを選択して完了

MT5(メタトレーダー5)の使い方」の記事で詳しく解説しています。

MT5
出典:MT5

また、MT4の場合と同様に、チャート上に表示される保有ポジションのラインをクリックしながらドラッグすることで、逆指値注文を設定することも可能です。

MT5
出典:MT5

「fxTrade」の場合

「fxTrade」で逆指値注文を設定する方法について解説します。

  • ・STEP1:新規注文を行いポジションを保有する
  • ・STEP2:チャート上で右クリックをする
  • ・STEP3:「トレーディング」→「新しい注文を作成」を選択
  • ・STEP4:「逆指値」を選択してレートに価格を記載して完了

fx Trade

OANDA証券が提供する「fxTrade」では、TradingViewと似たようなUIや機能で取引することが可能です。

fxTradeの使い方」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

FX取引で損切りする際のポイント

損切りをする際の注意点は、以下の通りです。

  • ・損切り貧乏に気をつける
  • ・根拠のないナンピン(難平)はしない
  • ・許容損失額を決めておく
  • ・単利と複利の罠に気をつける
  • ・決めた損切りルールを必ず守る

損切り貧乏に気をつける

損切り貧乏とは、こまめに損切りをしすぎることにより、利益を得るチャンスを逃したり、損失が積み重なってしまうことを指します。

このような状態に陥る原因の1つとして、取引ルールが決まっていないことや、中長期足を見ずに短期足だけでトレンドを判断していることが挙げられます。

取引ルールが決まっていても、短期足だけでの判断では相場の上下動に振り回される場合もあります。

FX相場は中長期足のトレンドに従って動く傾向があるため、短期足でもその方向にトレードすることで優位性が高くなります。

根拠のないナンピン(難平)はしない

損切りができない人は、ナンピン(難平)をする傾向があります。

ナンピンとは、ポジションを追加して平均取得単価を下げる取引手法です。

ナンピン

ナンピンが上手く機能すれば、含み損の回復や利益拡大が狙える場合もありますが、失敗した際の損失は大きくなってしまいます。

ナンピンを根拠なく行うことはリスクが高いため、FX初心者には推奨されません。

ナンピンするのではなく、最初のポジションをしっかりと損切りする対処法を身につけましょう。

許容損失額を決めておく

損切りのルールを考える上で、許容損失額(損失許容額)を決めることが重要です。

許容損失額とは、「今回の取引で、いくらまでの損失を許容するか」を決めた金額のことで、損切りまでの値幅とロット数により求められます。

トレード前に、最悪の負けシナリオを想定しておくことで、意図しない大きな損失を防ぐことができます。

単利と複利の罠に気をつける

資金管理をする上で知っておきたい知識に「単利(運用)」と「複利(運用)」があります。

単利運用とは元本のみを運用する方法で、FX取引における単利運用とはロットを固定して運用する方法のことです。

対して複利運用とは、元本に運用益を上乗せして運用する方法で、FX取引における複利運用とは取引の利益を資金に上乗せしてロットを増やしながら運用する方法です。

複利運用は運用益を上乗せして運用するため、指数関数的に運用益が増えていき単利運用と比べて大きな運用益が期待できます。

しかし、大きな運用益が期待できる反面、FX取引のような勝ったり負けたりを繰り返す取引の場合、一定の勝率下では単利運用の方が効率的に資金が増えていく傾向があります。

決めた損切りルールを必ず守る

自分で決めた損切りルールは、必ず守りながら取引をしましょう。

FX相場は、プロのトレーダーでも正確に予測することはできません。

この先どうなるかわからないからこそ、証拠金を守るためにもルールを厳守しながら取引することが大切です。

FX取引の損切りに関するQ&A

FX取引の損切りに関して、多く見られる疑問点は以下の通りです。

  • ・損切りができない人の特徴は何ですか?
  • ・損切りの目安はありますか?
  • ・そもそも損切りは意味がありますか?

損切りができない人の特徴は何ですか?

行動経済学のプロスペクト理論では、人は損失回避の傾向が強い一方で、大きな損失の可能性を目の前にするとリスク追求的になるという性質が示されています。

そのため、利益が出ている場合は早く利益確定することを好む傾向があり、逆に損失が出ている場合はその損失を取り戻そうと、より大きなリスクを取る傾向があります。

人間にはこうした心理が働いているため、損切りできないことは一般的です。

損切りできるようになるためには、意図的に練習して身につける必要があると言えます。

損切りの目安はありますか?

損切りの目安はトレードスタイルによって異なり、さまざまな基準や見解があります。

その中から一例を挙げると「損切り幅は利食い幅の半分以下」という目安があります。

FX取引では、最初からスプレッドによる損失が発生します。

必ず収支がマイナスの状態からスタートするため、利食い幅と損切り幅が同じだと、取引を重ねるごとに、スプレッド分だけマイナスが蓄積されていきます。

そのため、利食い幅を損切り幅より大きくし、利益をしっかり確保する必要があります。

その割合の目安が「利食い幅が損切り幅の2倍以上(損切り幅が利食い幅の半分以下)」ということです。

他にも損切りの目安がありますが、最終的には自身が希望するリターンと、許容できるリスクに応じて決める必要があります。

そもそも損切りは意味がありますか?

ここまで説明してきた通り、損切りはFX取引をする上で、非常に重要です。

ただ「損切り貧乏」という言葉もある通り、相場の中には「損切りすべきでない場面」も存在します。

テクニカル分析によって、「有利な相場になる」という見込みがあれば、あえて損切りをしない方が良いケースもあります。

重要なのは、損切りをする場合もしない場合も「根拠を持って取引を行う」ことです。

【まとめ】FX取引の損切りとは|設定目安・ルールの決め方を解説

損切りとは、含み損が発生しているポジションを決済し、それ以上の損失拡大を防ぐことです。

損切りのラインは「損失額・損失率、値幅(pips)、テクニカル分析」などのルールによって設定できます。

損切りラインに「逆指値注文」を設定すれば、必要な場面で自動的に損切りが実行されます。

逆指値注文は、「MT4・MT5・fxTrade」などのいずれのツールでも設定できます。

また、OCO注文・IFD注文・トレーリングストップ注文などの注文方法も組み合わせることで、より幅広い条件に適応しながら、損切りを行えます。

「損切り貧乏」にならないように注意しつつ、求めるリターンと許容できるリスクのバランスを考え、自身で適正と考えられる損切りラインを設定しましょう。


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