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一目均衡表とは|見方・使い方・設定方法をわかりやすく紹介(いちもくきんこうひょう)


FXのチャート分析に有効なテクニカル指標には数多くの種類が存在しますが、その中でも代表的なものの1つに「一目均衡表」があります。

一目均衡表は日本で考案されたテクニカル指標で、5本の線で構成されています。

時間論、波動論、水準論(値幅観測論)の3つの理論に基づいているのが特徴です。

一目均衡表は、売り手と買い手の均衡を一目で読み取ることができ、相場のトレンドや方向性を判断する上で有効だと言えます。

多くの投資家やトレーダーが利用しており、相場を予測する上で、理解しておくことは重要です。

本記事では、一目均衡表の概要や見方、使い方や設定方法を解説していきます。

一目均衡表とは?

一目均衡表とは?

出典:TradingView

一目均衡表は日本生まれのテクニカル指標です。

もともとは株価を分析するために開発された指標ですが、為替や商品など他の相場にも応用可能で、FXトレーダーからの人気も高いです。

また、海外でも「ichimoku」の名称で親しまれており、国内外問わず世界中の投資家に使われています。

考案者

考案者は、日本の株式評論家である細田悟一(ほそだごいち)氏です。

細田氏は1898年の戦前生まれで、都新聞(現在の東京新聞)の商況部部長を務められていました。

戦後に、ペンネームとして「一目山人(いちもくさんじん)」を用いるようになり、日証新聞などに不定期に記事を掲載しています。

そして、1969年(昭和44年)に『一目均衡表』第一巻を発刊し、一目均衡表を一般公開しました。7年の歳月と約2000人を費やした成果として世に出されています。

考え方

一目均衡表の考え方は、「売り手と買い手のバランスが崩れたときに相場は大きく動く」というものです。

多くのテクニカル指標は、価格の変化に重きを置いているのに対し、一目均衡表は「いつ相場が動くか」「いつ目標値が達成されるか」といった時間の概念を重視しています。

実際のチャートを見ると、相場の均衡が崩れたときには、崩れた方向へのトレンドが一定期間続くことが多い傾向があります。

チャート上で「売り手と買い手の均衡」を一目で視覚的に読み取れるのが一目均衡表です。

一目均衡表の見方

一目均衡表は、基準線、転換線、先行スパン1、先行スパン2、遅行スパンの5本の線で構成されます。

遅行スパン以外は、計算対象期間の半値(中心の水準)の推移を表します。

一目均衡表の見方

出典:TradingView

基準線

基準線は、過去26日間の最高値と最安値の半値を基準値として算出し、それをつなげた線です。

例えば、過去26日間の高値が150円、安値が140円だった場合は半値の145円が基準値となります。

期間の「26」は一目均衡表における基本数値であり、原則固定です。

・求め方

基準線=(過去26日間の高値+安値)÷2

転換線

転換線は、過去9日間の最高値と最安値の半値を転換値として算出し、それをつなげた線です。

基準線と同様に、過去9日間の高値が150円、安値が140円なら半値の145円が転換値になります。

期間の「9」も一目均衡表における基本数値であり、固定して使われます。

・求め方

転換線=(過去9日間の高値+安値)÷2

先行スパン1

先行スパン1は、転換線と基準線の半値を26日先行させて、それをつなげた線です。

26日未来の相場水準、押し目や戻りを予測するのに用いられます。

・求め方

先行スパン1=(転換線+基準線)÷2を26日先行させる

先行スパン2

先行スパン2は、過去52日間の最高値と最安値の半値を26日先行させて、それをつなげた線です。

先行スパン1同様、26日未来の相場水準、押し目や戻りを予測するのに役立ちます。

・求め方

先行スパン2=(過去52日間の高値+安値)÷2を26日先行させる

遅行スパン

遅行スパンは、当日の終値を26日後ろにずらして表示させた線です。

現在の価格と26日前の価格を比較することで、上げ相場なのか下げ相場なのかを読み取ることができます。

・求め方

当日の終値を26日前にずらす

一目均衡表の3大理論

一目均衡表の根底にあるのは、時間論、波動論、水準論(値幅観測論)という3つの理論です。それぞれについて、以下で詳しく紹介します。

時間論

時間論とは、時間の観点から相場の転換点を分析する考え方です。

一目均衡表では「9」「17」「26」が基本数値として用いられ、その期間で相場が転換しやすいとされています。

これらは基準線や転換線の期間に使用されていることからも、重要な数値であることが分かります。

また、「33」「42」「52」「65」「76」などの複合数値もあります。

波動論

波動論とは、波動の形から相場の方向性を分析する考え方です。

基本となる波動には、「I波動」「V波動」「N波動」の3つがあります。

波動論

  • ・I波動:上昇のみ、下落のみ
  • ・V波動:下落→上昇、上昇→下落
  • ・N波動:上昇→下落→上昇、下落→上昇→下落
I波動とV波動が繰り返し形成され、最終的にN波動になるとされています。

特に重要なのはN波動で、相場を分析する際はこのN波動を意識することが大切です。

水準論(値幅観測論)

一目均衡表の水準論は、相場の変動幅から上値や下値の目標値を分析する考え方で、別名「値幅観測論」とも呼ばれます。

水準論の代表的な計算方法は、「N計算値」「E計算値」「V計算値」「NT計算値」の4つです。

これらの計算方法を用いることで、価格がどこまで上昇するのか、または下落するのかを予測できます。

N計算値:ABの値幅分、押し目Cから上昇する「目標値=C+(B-A)」

目標値=C+(B-A)

E計算値:ABの2倍の値幅まで押し目Cから上昇する「目標値=B+(B-A)」

目標値=B+(B-A)

V計算値:BCの2倍の値幅分、押し目Cから上昇する「目標値=B+(B-C)」

目標値=B+(B-C)

NT計算値:ACの値幅分、押し目Cから上昇する「目標値=C+(C-A)」

目標値=C+(C-A)

相場の上昇幅や下落幅を分析できるため、ポジションを決済する際の目安として活用可能な理論です。

一目均衡表の使い方

一目均衡表を利用すれば、他のテクニカル指標とは異なる視点で相場を分析できます。

ここでは基本的な使い方を紹介します。

ローソク足と各線の位置関係

ローソク足と各線の位置関係からトレンドを判断できます。

強い上昇トレンドのときは、ローソク足>転換線>基準線>先行スパン1(上限)>先行スパン2(下限)の順に並ぶのに対し、下降トレンドの場合はこの逆の並びになります。

一方、ローソク足および各線が絡み合っている場合は、相場に方向感が出ていないことを表します。

同時に、各線が絡み合っている水準は相場(もみ合い)の中心と解釈できます。

ローソク足と各線の位置関係

出典:TradingView

押しや戻りの目安

トレンドが発生している場合、転換線、基準線、先行スパン1・2が、押し目や戻りとして機能しやすいです。

押しや戻りの目安

出典:TradingView

例えば、上昇トレンド時に押し目として機能していた転換線をローソク足が下抜いた場合、次は基準線、先行スパン1、先行スパン2を押し目の目安として参考にできます。

同様に、下降トレンド時に戻りとして機能していた転換線をローソク足が上抜いた場合、次は基準線、先行スパン1、先行スパン2を戻りの目安として活用できます。

各線の交差はトレンドの停滞や転換を示唆

トレンドが停滞または転換する際には、上記のトレンド時の位置関係が崩れて各線がクロスしていきます。

つまり、各線のクロスは相場の停滞または転換を示唆するということです。各線の位置関係を確認するだけでも、現在の相場がトレンドかどうかの見極めができます。

各線の交差はトレンドの停滞や転換を示唆

出典:TradingView

雲は抵抗帯として機能

先行スパン1と先行スパン2の2本の線に挟まれた領域を「雲」と呼びます。雲は抵抗帯として機能しやすく、

一目均衡表において注目される要素の1つです。

ローソク足よりも上に雲がある場合は上値抵抗帯、ローソク足よりも下に雲が下にある場合は下値抵抗帯として機能します。

雲をローソク足が抜けるということは、トレンドの転換(位置関係が入れ替わる)を意味します。

雲は抵抗帯として機能

出典:TradingView

遅行スパンは最も重要な線で、ローソク足より上に位置すれば上昇トレンド、下に位置すれば下降トレンドを示唆します。

遅行スパンがローソク足を上回るタイミングは上昇トレンドへの転換を意味し、買いサインとなります。

逆に、遅行スパンがローソク足を下回るタイミングは下降トレンドへの転換、つまり売りサインです。

ローソク足と遅行スパンの位置関係

出典:TradingView

三役好転・三役逆転

一目均衡表には、「三役好転」および「三役逆転」という相場状態があります。

「転換線が基準線よりも上」「遅行スパンがローソク足よりも上」「ローソク足が雲よりも上」の3つの条件を満たす三役好転は強い買いサインです。

反対に、「転換線が基準線よりも下」「遅行スパンがローソク足よりも下」「ローソク足が雲よりも下」の3つの条件が揃う三役逆転は強い売りサインとなります。

三役好転

出典:TradingView

【三役好転の条件】

  • ・転換線が基準線よりも上にある状態
  • ・遅行スパンがローソク足よりも上にある状態
  • ・ローソク足が雲よりも上にある状態

【三役逆転の条件】

  • ・転換線が基準線よりも下にある状態
  • ・遅行スパンがローソク足よりも下にある状態
  • ・ローソク足が雲よりも下にある状態
 

下落していた相場が三役好転後に、大きく上昇していることが分かります。

一目均衡表の設定方法

ここではMT4(メタトレーダー4)・MT5(メタトレーダー5)・TradingView(トレーディングビュー)といった各取引プラットフォームで一目均衡表を設定する方法について紹介します。

MT4への設定方法

MT4で一目均衡表を表示するには、MT4を開いて上部メニューの「挿入」から「インディケータ」→「トレンド」→「Ichimoku Kinko Hyo」を選択します。

MT4への設定方法

出典:MT4

MT4について詳しく知りたい人はこちら

の記事で詳しく解説しています。

MT5への設定方法

MT5で一目均衡表を表示するには、MT5を開いて上部メニューの「挿入」から「インディケータ」→「トレンド系」→「Ichimoku Kinko Hyo」を選択します。

MT5への設定方法

出典:MT5

MT5について詳しく知りたい方はこちらの記事で詳しく解説しています。

Tradingviewへの設定方法

Tradingviewで一目均衡表を表示するには、Tradingviewを開いて上部メニューの「インジケーター」をクリック→テクニカルの一覧から「Ichimoku Cloud(一目均衡表)」を選択します。

検索窓に「一目均衡表」と入力して検索すれば素早く見つけられます。

Tradingviewへの設定方法

出典:TradingView

Tradingviewについて詳しく知りたい方はこちらの記事で詳しく解説しています。

一目均衡表を使う際の注意点

一目均衡表を使う際の注意点は、以下の通りです。

  • ・雲の中に価格がある時や雲がねじれている時は要注意
  • ・一目均衡表が正しいとは限らない

雲の中に価格がある時や雲がねじれている時は要注意

一目均衡表の雲の中に価格がある時や、雲がねじれている時は注意が必要です。

なぜならば、方向感がなくレンジ相場になる傾向があるからです。

一目均衡表の注意点

出典:TradingView

雲の中に価格がある時や雲にねじれが発生している時は、レンジ相場になっていることが分かります。

この状態は、特に5分足や15分足などの短い時間足で多く発生する傾向があるので、短期売買を行う人は注意しましょう。

一目均衡表が正しいとは限らない

どんなテクニカル分析でも「ダマシ」が発生することがしばしばあります。

ダマシとは「上がるはずのパターンで上がらない」「下がるはずのパターンで下がらない」というものです。

このようなダマシに対しては、以下のような対策をとれます。

  • ・一目均衡表をさらに分析する
  • ・他のテクニカル指標と組み合わせる
  • ・ファンダメンタルズ分析と組み合わせる

ただ、これらの方法を合わせてもダマシはしばしば起きるものです。

一目均衡表を用いる場合に限らず、「どんなチャート分析も百発百中はない」ということをよく理解しておきましょう。

一目均衡表に関するよくある質問

ここでは、一目均衡表に関してよくある疑問点をピックアップして解説します。

  • ・パラメーター設定はどうすれば良いの?
  • ・どんなテクニカル指標と組み合わせると良いですか?

パラメーター設定はどうすれば良いの?

一目均衡表が重要視する基本数値の「9」「26」「52」がデフォルトの数値なので、特に変更する必要はありません。

テクニカルは、多くの人が利用するから機能するといわれています。オリジナルの数値に変更するよりも、多くの人が利用するデフォルト設定の方が、押し目や戻りの目安になったり、売買サインの参考になったりするでしょう。

どんなテクニカル指標と組み合わせると良いですか?

例えば、「順張り・逆張り」のそれぞれの場面についていえば、以下のテクニカル指標との組み合わせが有効です。

  • ・「順張り」をする時:MACD・RSI
  • ・「逆張り」をする時:RCI・ストキャスティクス

順張りでMACD・RSIと組み合わせるのは、一目均衡表で「三役好転」を見逃してしまった時です。

一目均衡表だけではエントリーポイントが分かりにくくなるため、エントリーポイントを判断できるMACD・RSIを用います。

一方、逆張りでRCI・ストキャスティクスと組み合わせるのは、一目均衡表ではサインが出ない時です。

そのようなケースでは「レンジ相場」の可能性が高いため、レンジ相場に適したオシレーター系のテクニカル指標を組み合わせるのが有効です。

【まとめ】一目均衡表とは|見方・使い方を解説

一目均衡表は、売り手と買い手の均衡を一目で見抜くことができるテクニカル指標です。

転換線、基準線、先行スパン1、先行スパン2、遅行スパンの5本の線で構成され、先行スパンで挟まれた領域は「雲」と呼ばれます。

上昇トレンド発生時は、ローソク足>転換線>基準線>先行スパン1>先行スパン2の順に並び、各線や雲は押し目や戻りの目安となります。

また、「三役好転」は強い買いサイン、「三役逆転」は強い売りサインです。

一目均衡表は有用なテクニカル指標ですが、必ずしも分析通りの結果になるとは限りません。しかし、他のテクニカル指標と組み合わせて使うなど、工夫して利用することでチャート分析の精度をより高めることができます。


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