テクニカル分析解説

ゴールデンクロス・デッドクロスとは|買い時・ダマシ対策・注意点を解説


テクニカル指標の売買シグナルに、ゴールデンクロス・デッドクロスがあります。

どちらもトレンドの発生を示唆するサインであるため、トレンドフォローのトレードに役立ちます。

ゴールデンクロスは、短期移動平均線が中長期移動平均線を下から上に交差する動きのことで、上昇トレンドが始まるサインとされ、買いシグナルとして利用されます。

一方、デッドクロスは、短期移動平均線が中長期移動平均線を上から下に交差する動きのことで、下落トレンドが始まるサインとされ、売りシグナルとして利用されます。

ただし、ゴールデンクロス・デッドクロスは必ず機能するわけではなく、ダマシと呼ばれるサイン通りにならないパターンもあるため、注意が必要です。

本記事では、ゴールデンクロス・デッドクロスの概要や使い方・注意点を解説していきます。

ゴールデンクロス・デッドクロスとは

ここでは、ゴールデンクロス・デッドクロスで用いる移動平均線の一般的な組み合わせや、一般的な計算式について解説します。

一般的な組み合わせ

FX取引や株式投資の場合、「25日線・75日線」が広く用いられ、より短期の値動きを測る場合には「5日線・20日線」を用いるケースも見られます。

週足の場合「13週線・26週線」が四半期と半期に該当するため、好んで用いられる傾向があります。

FX取引の場合、短期線・中期線・長期線を、以下のように大別するのが一般的です。

ただし、組み合わせに絶対的な正解はないので、自分の取引スタイルや好みに合わせて設定するのが良いでしょう。

短期線 中期線 長期線
日足 5日 25日 75日・100日・200日
週足 9週 13週 26週・52週
月足 12か月 24か月 60か月・120か月

これらのうち、短期線が「中期線」を突き抜けるパターンを「ミニゴールデンクロス・ミニデッドクロス」と呼ぶことがあります。

そして、短期線が「長期線」を突き抜けるパターンを「ゴールデンクロス・デッドクロス」と呼んで区別します。

一般的な計算式

ゴールデンクロスは、チャートツール上で線がクロスするビジュアルから判断できますが、その線のもととなる値の変化で考えてみましょう。

2本の線がクロスするということは、次の条件を満たします。

  • ・①:当日の短期移動平均値≧当日の中・長期移動平均値
  • ・②:前日の短期移動平均値<前日の中・長期移動平均値

①は「現時点で短期線が中長期線の上にある」、②は「前日は、短期線が中長期線の下にあった」という意味です。

①と②で、短期線と中長期線の位置関係が逆(線がクロス)になったことを表します。

これらの計算式(条件)を満たしている直近の日付が、ゴールデンクロス達成日ということになります。

デッドクロスは、上記の反対で考えます。

  • ・①:当日の短期移動平均値≦当日の中・長期移動平均値
  • ・②:前日の短期移動平均値>前日の中・長期移動平均値

同様に、計算式(条件)を満たしている直近の日付が、デッドクロス達成日ということになります。

ゴールデンクロス・デッドクロスの具体例

ここでは、ゴールデンクロスとデッドクロスの具体例を、実際のチャートとともに解説していきます。

ゴールデンクロス

移動平均線におけるゴールデンクロスとは、短期移動平均線が中長期移動平均線を下から上に突き抜ける動きのことです。

一般的に、ゴールデンクロスが発生すると相場が上昇する傾向があり、買いシグナルとして利用されます。

ゴールデンクロス
出典:TradingView(赤ライン:25日移動平均線 緑ライン:75日移動平均線)

上画像では、下落トレンドが続いていましたが、短期線(赤ライン)が中長期線(緑ライン)を上抜けるゴールデンクロスをきっかけとし、上昇トレンドに転じているのが分かります。

デッドクロス

移動平均線におけるデッドクロスとはゴールデンクロスの反対で、短期移動平均線が中長期移動平均線を上から下に突き抜ける動きのことです。

一般的に、デッドクロスが発生すると相場が下落する傾向があり、売りシグナルとして利用されます。

デッドクロス
出典:TradingView(赤ライン:25日移動平均線 緑ライン:75日移動平均線)

上画像では、デッドクロスの発生後に、大きく相場が下落していることが分かります。

ただし、その前をよく見ると、ゴールデンクロスがダマシに終わっています。

このように、クロスによるサインが発生しても、必ずサイン通りに動くわけではないことに注意する必要があります。

ゴールデンクロス・デッドクロスの売買シグナル

ゴールデンクロス・デッドクロスが発生するケースとして、主に以下の6つが挙げられます。

  • ・【ゴールデンクロス】買いシグナル①
  • ・【ゴールデンクロス】買いシグナル②
  • ・買い継続
  • ・【デッドクロス】売りシグナル①
  • ・【デッドクロス】売りシグナル②
  • ・売り継続

それぞれのケースを図で示していきます。

【ゴールデンクロス】買いシグナル①

【ゴールデンクロス】買いシグナル①

出典:TradingView

このパターンでは、横ばい、もしくは上昇し始めている長期線(緑ライン)を、短期線(オレンジライン)が、下から上に突き抜けています。

そして、2本の移動平均線の上に、ローソク足が位置しています。

このようなパターンは典型的な買いシグナルです。

【ゴールデンクロス】買いシグナル②

【ゴールデンクロス】買いシグナル②
出典:TradingView

このパターンでは、短期線(オレンジライン)が長期線(緑ライン)を下回る状態が続きながら、ジワジワと接近しつつありました。

そして、その時点でローソク足は2本の移動平均線の上に位置しています。

このような相場では、近いタイミングでゴールデンクロスが発生し、上昇トレンドに転じる可能性があります。(実際に、クロスした後、安定的な上昇トレンドが発生しています)

このようなパターンは、「買いシグナル①」の発生を先読みした買いシグナルです。

買い継続

買い継続
出典:TradingView

このパターンでは、上から順に「ローソク足>短期線(オレンジライン)>長期線(緑ライン)」の順に並んでおり、いずれも上昇トレンドを示しています。

このような形は「パーフェクトオーダー」または「順パターン」などと呼ばれ、買い継続のシグナルとされます。

【デッドクロス】売りシグナル①

【デッドクロス】売りシグナル①
出典:TradingView

このパターンでは、上昇から横ばい、もしくは下降し始めている長期線(緑ライン)を、短期線(オレンジライン)が上から下に突き抜けています。

さらに、その時点でローソク足が、2本の移動平均線の下に位置しています。

このようなパターンは典型的な売りシグナルです。

【デッドクロス】売りシグナル②

【デッドクロス】売りシグナル②
出典:TradingView

このパターンでは、高値圏で長期線(緑ライン)が横ばい、もしくは下落し始めており、短期線(オレンジライン)は横ばいから下落傾向に変化しつつあります。

近いタイミングで双方の線がデッドクロスする可能性があり、さらにローソク足も双方の線の下に位置しています。

このようなパターンも「売りシグナル①」の発生を先読みした売りシグナルです。

売り継続

売り継続
出典:TradingView

このパターンでは、上から順に「長期線(緑ライン)>短期線(オレンジライン)>ローソク足」の順に並んでおり、いずれも下落トレンドを示しています。

このような形は「(弱気の)パーフェクトオーダー」または「逆順パターン」などと呼ばれ、売り継続のシグナルとされます。

ゴールデンクロス・デッドクロスを使用する際の注意点

ゴールデンクロス・デッドクロスを使用する際の注意点は、以下の通りです。

  • ・ダマシに気をつける
  • ・遅行性に気をつける
  • ・レンジ相場に気をつける

それぞれの注意点について解説していきます。

ダマシに気をつける

ゴールデンクロスやデッドクロスは必ず機能するわけではありません。

ダマシとは、売買シグナルと逆の方向へ相場が動いてしまうことです。

ダマシ
出典:TradingView

上画像では、ゴールデンクロスが発生しているのにもかかわらず、相場は上昇していません。

逆に、デッドクロスの発生後に相場が上昇している場面もあります。

こうしたダマシを見抜く方法の1つは、クロスの角度を見ることです。

クロスの角度が深いということは、短期のトレンドが強力であることを表します。

下図のようにクロスの角度が深ければ本物・浅ければダマシの可能性が高くなると考えることもできます。

クロスの角度

また、ダマシを見抜くには他の指標を組み合わせることも有効で、クロスが本物かどうかをより判断しやすくなります。

遅行性に気をつける

ゴールデンクロス・デッドクロスは遅行する性質があり、ローソク足が示すトレンドよりも遅れてサインを発します。

そのため、クロスが発生した時点でトレンドはすでに終わっているという可能性もあり得ます。

別のテクニカル指標を併用して、クロスを先読みするなど、応用が必要な場面もあります。

レンジ相場に気をつける

レンジ相場とは、一定の範囲で上下を繰り返す相場です。

このレンジ相場で、トレンドの発生を示唆するゴールデンクロス・デッドクロスが発生した場合も、ダマシになる可能性が高いため注意が必要です。

レンジ相場が何か分からない人は、こちらの記事も一緒に読んでみましょう。

ゴールデンクロス・デッドクロスに関するQ&A

ゴールデンクロス・デッドクロスに関して、よく見られる疑問点は以下のようなものです。

  • ・ゴールデンクロスは意味がないって本当ですか?
  • ・ゴールデンクロス・デッドクロスと相性の良い指標は何ですか?
  • ・移動平均線は何日のものを使いますか?

それぞれの疑問点について解説していきます。

ゴールデンクロスは意味がないって本当ですか?

ゴールデンクロスにはいくつかの弱点や、苦手な相場環境があります。

それらの影響が大きい場面では、クロスがダマシに終わってしまう可能性は十分にあります。

一方、相場が停滞している状態からトレンドが始まるのを見つけたり、トレンドが終わろうとしている状態を見つけるのは得意です。

どんな場面でゴールデンクロスが発生し、どんな意味を示唆するのかを判断できるようになると、分析の精度が高まるでしょう。

ゴールデンクロス・デッドクロスと相性の良い指標は何ですか?

テクニカル指標を組み合わせることにより、フィルターをかけてダマシを減らす(サインの確度を高める)ことが可能になります。

移動平均線のクロスはレンジ相場を苦手とするため、レンジ相場を見抜けるRSIボリンジャーバンドなどをフィルター役に使うことも有効です。

あるいは、移動平均線よりも先にクロスが出やすいMACDを先行指標として利用する手段も考えられます。

移動平均線は何日のものを使いますか?

移動平均線は、25日線と75日線を用いるのが一般的といえます。

より短期的な値動きを測りたい場合、5日線と20日線を用いることもあります。

25日線と75日線
出典:TradingView

上画像は2024年1月19日〜2月9日の米ドル/円相場(1時間足)で、25日線(オレンジライン)と75日線(緑ライン)を表示したチャートです。

そして、青い+がゴールデンクロス・デッドクロスの発生した部分です。

チャートが表す21日間に7回(3日に1回)のペースで、クロスが発生したことが分かります。

一方、全く同じ相場で、短期を5日線(オレンジライン)、長期を20日線(緑ライン)に設定すると、下図のようになります。

5日線と20日線
出典:TradingView

この画像で見ると、同じ21日間でも23回のゴールデンクロス・デッドクロスが発生しています。

1日に平均1回以上のペースでクロスが発生したことになり、短期的な売買のチャンスを、より見つけやすくなることが分かります。

後者のように、移動平均線の計算期間が短い場合、通常のクロスと区別して「ミニゴールデンクロス・ミニデッドクロス」と呼ぶこともあります。

「ミニ」と通常のクロスの分類については、主に以下の2パターンが見られます。

通常 ミニ
パターン①「短期」線が「長期」線を抜ける 「短期」線が「中期」線を抜ける
パターン②「中期」線が「長期」線を抜ける

通常のクロスについては、長期線とペアになる線が「短期線・中期線」の2通りに分かれます。

クロスオーバーとの違いは何ですか

クロスオーバーとは、ゴールデンクロスとデッドクロスを合わせた総称です。

ゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売りという戦略やルールを「クロスオーバー戦略」「クロスオーバールール」と呼びます。

また、一般的なクロスオーバーは2本の移動平均線を用いますが、3本の線を用いる場合には「トリプルクロスオーバー」と呼ぶこともあります。

クロスオーバーは、DMI(方向性指数)MACD(移動平均収束拡散手法)など、さまざまな指標でも発生します。

【まとめ】ゴールデンクロス・デッドクロスとは|買い時・ダマシ対策・注意点を解説

ゴールデンクロス・デッドクロスは、移動平均線などのテクニカル指標が発する売買シグナルです。

ゴールデンクロスは買いのサイン、デッドクロスは売りのサインを表します。

ただし、苦手な相場環境ではダマシになる可能性もあるので注意が必要です。

クロスの角度に注目し、ダマシを自身で判断できるよう心がけましょう。

ゴールデンクロス・デッドクロスに限らず、万能な売買シグナルはありません。

あくまでも「相場予想の1つの武器」と考え、相場をあらゆる方向から見るように心がける必要があります。


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